三隅炎雄

侠花列伝 襲名賭博の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

侠花列伝 襲名賭博(1969年製作の映画)
3.9
松原智恵子主演の任侠映画。と言っても藤純子みたいに男相手に立ち回りするのではなくて、脚本の星川清司はヤクザと芸者の間に生まれたヒロイン松原のために、藤竜也・江原真二郎・高橋英樹の三人の男たちが命をかけて死んでいくさまを描く。やくざ映画の形を借りた悲恋物というのか、かなりの異色作だ。
撮影横山実、照明藤林甲、美術木村威夫らによる画面の力が尋常でなく、かつての日本映画の実力を見せつけられる思いだ。一貫して格調高い小澤啓一の演出も、松原への愛に死んでいく男たちの官能をよく捉えて美しい。

壺振りで絡む梶芽衣子は後の修羅雪姫の凄みを既に身につけていてファンに喜ばれよう。松原が働く小料理屋の佐野浅夫と奈良岡朋子の夫婦が舌を巻くほどうまい。

星川清司の日活での仕事は思い切った異色作が多いのが分かる。
三隅炎雄

三隅炎雄