プリズマティカリゼーション

ハウルの動く城のプリズマティカリゼーションのレビュー・感想・評価

ハウルの動く城(2004年製作の映画)
5.0
まずこの映画に原作小説があるのをご存じでしょうか
その原作ではマルクルが青年だったりソフィは赤毛だったりそもそも城に足なんか生えてなかったり映画で改変されているところもありますが基本的な設定は結構変わっていないんですね
その内のいくつかは映画の中では語られないのですが設定としては生きているのです

この映画キムタクが下手とかBBA声とか才能の枯渇とか色々批判がありますが「前半は面白いのに後半がイミフ」というような印象を抱いている方はこの設定を知るだけでだいぶ印象が変わるのではと思います

この語られていない設定の内映画を見る上で特に重要なのがひとつあります
それは『ハウルの家の本当の場所』です

簡単に言うとハウルの城とハウルの家は違う場所にあります
ハウルの城は荒れ地周辺を歩き回っているだけのガラクタでその中には家はありません
じゃあ家は本当はどこにあるかというと港町にあります
ハウルの家にどこでもドアみたいなドアがありますよね
あのドアは色々な場所に繋がっていますがその一つが城の玄関口(に見えるもの)に繋がっているだけなのです

ソフィは最初荒れ地から城に入り込みますよね、この時「めっちゃ動いてるのに中は全然揺れてないな…」と思いませんでしたか
僕も最初こう考えるも「まぁ魔法だしな」と片づけてしまいました
この違和感が実は当たっているんです

ハウルはなぜこんな事をしているかというと自らを狙うサリマンや荒れ地の魔女の目を欺く為にやっています

この設定を頭に入れて映画を見れば後半、特に「引っ越し」で何が起こっているか分かりやすくなるかと思います

宮崎監督はあえて説明を省いたそうですが、この設定を語らなかったのはとてももったいなかったと思います
映画の中だけでは全てを楽しめないというのはやはり映画としては間違っているのかもしれませんし、文句なしの満点とは言い難いです
ですが自分は原作を読んでからこの映画のことが大好きになりました
少し自分から歩み寄るだけで好きなジブリ映画が一つ増えると考えればそれはとても素敵なことではないでしょうか
それは宮崎監督が長編アニメーション作品から引退し、スタジオジブリがほぼ解体された今、より価値があることの様に思えます
是非多くの方に今作を見直していただきたいです