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ハウルの動く城のNAOKIのレビュー・感想・評価

ハウルの動く城(2004年製作の映画)
3.7
「イケメン」というハンデ…

何を言ってるんですか?それを言うなら…
「ブサイク」というハンデ…
でしょ?

おれが今まで親交があった友人で一番イケメンだったのはやっぱりヒロかな?

ちょっと信じられないくらいに整った顔だった。理想的な輪郭に最低限の表情を作り出す筋肉…その上になめし革のような皮膚がたるみなく張られ…そこにある深い海のような憂いを秘めた大きな目…その顔を眺めているとSF映画に出てくるアンドロイドかレプリカントか…そんな感じだった…

「おれがヒロみたいな顔に生まれてたら人生変わってただろうな」思わず言ってしまう。

「たぶん…ひどい人生になるよ…色々大変なことも多いんだよ…おれはナオみたいな味のある顔に生まれたかったな」
「うるせー!味があって悪かったな」
「美人とかイケメンというのは金持ちみたいなもんだよ…先祖代々そういう人はその財産の使い方を小さい頃から学ぶけど…成金は品がなくて大抵失敗するだろう?だから整形や魔法でいきなりかっこ良くなっても破滅するだけだよ」
「でもお前はその容姿を先祖から受け継いでいるんだろう?」
「ナオはおれが女にもてると思ってるんだろう?意外とダメなんだよ…最初から遊ばれるとか冷たいとかレッテル貼られて…警戒されるし…嫌いな人間につけ回されるし」

「そっかなぁ?カッコいいに越したことはないと思うけどなぁ」

カリオストロの城…天空の城…に続く「城」三部作の完結編(ウソ)「城」という単語でテンションが下がるというナイツの漫才を思い出しますが、重要なのはこの作品が「もののけ姫」以降だということ…

おれは引退すると宣言して引退しなかった「もののけ姫」を境に宮崎駿アニメは変わったと感じます。
「もののけ姫」前は何よりも観客がどう感じるかを大切にそのテーマを伝えるディテール(細部)にこだわり…エンタメとして申し分のない作品を作り続けた…
「もののけ姫」後は…人がどう言おうがどう思おうが関係ない!「ワシは作りたいものをつくりたいように作る!」に変わった気がする。作家性が炸裂し、それは傑作にもなりうれば観客を置き去りにもする。このハウルはポニョと風立ちぬに続く作家性を強烈に感じます。

その「やりたいようにやる!」は声優のキャスティングにも炸裂…なんと木村拓哉と倍賞千恵子!

イケメンの代名詞として確実に一時代に君臨したキムタク…木村拓哉…
なんかキムタクって呼び方は個人的に好きじゃない…ちゃんと木村拓哉と言いたい。
何でだろうな?マツジュンやオザケンは構わないのにキムタクはちょっと失礼な感じがする…キャップでいきましょうか🐱

キャップのことは「武士の一分」のレビューの中で…演技が上手い下手ではなくキャップはそのままでいいっていうようなことを書いた…この「ハウルの動く城」ではアニメ史上屈指のイケメン…若き魔法使いハウルの声を当てる…

あのミニオンズの怪盗グルーってアニメがあるじゃないですか…おれはあの吹き替えダメなんですよ。鶴瓶師匠…演技も上手いし声優も上手い…だけどどうしてもあの声聞くと師匠の顔が浮かんでしまってアニメに入り込めない💦
ハウルも最初に木村拓哉が声をやるって聞いてたぶんそうなると思ってました。

ところがどうしたことか…この映画ではキャップの顔は浮かびません…ちゃんとハウルの声に聞こえます。不思議でした。やはりこの人は上手いのかな?
いや…というよりもキャップは俳優や声優として演じることに非常に真摯に向き合う人なのは間違いない…と思うようになりました。
つまり…イケメンのハンデがわかっている人…

そりゃそうだよね…顔がいいだけで芸能界や映画界で活躍できるわけないもんね…

さてこんなキャップの好演もあって「もう小さなとこにはこだわらない」やりたい本題の宮崎アニメ…文字通りおもちゃ箱をひっくり返したようなストーリーは戦争の暗いイメージも描きながらもずいぶん楽しい作品になりました。

ヒロは言う。
「自分が…いくらか人より見てくれがいいと自覚したら…人以上に謙虚にならないとひどい目に会うとおれは学んだんだよ」
「イケメンというハンデ…か…それでも変われるんならイケメンの方がいいと『味のある』おれとしては思ってしまうがな…」

これを読んでる女性陣はこんなヒロを見てみたい!って思うでしょうが…彼はゲイなので女には興味なしでした😁💦

息子が小さい頃…ゼンマイ仕掛けのハウルの動く城のオモチャを買ってあげました…そのオモチャは今でもおれの手元にあって…
ゼンマイを巻くとジーカシャン…ジーカシャンと不器用に歩くのです。

ジーカシャン、ジーカシャン…

「ハウルの動く城」でした。
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