ピュンピュン丸

兵隊やくざ 殴り込みのピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

兵隊やくざ 殴り込み(1967年製作の映画)
3.5
このシリーズが好きで、しかし前作もそうだが7作目の本作も見る方法がなく、買ってまで見やした…。

本作のなかでなんと日本は敗戦が決まり、終戦を迎える。となれば、軍隊の階級なんて軽石より軽いものとなり、大宮喜三郎めでたく大暴れとなるわけだが、しかし、よく考えたら、それではあまり面白くないのだ。軍のような典型的なピラミッド型の組織において、上官は絶対で漬物石のように重たいもの。それを稀代の石頭の大宮一等兵が粉砕していくから痛快なわけで、そこに世のリーマン族が拍手喝采するわけだ。軽石になったものを粉砕しても何もおもろくないのだ。そこのとこが本作のちょっとしたマイナス点だ。

だが、このシリーズを愛する自分にはそういうことはどうでもいい。それと、このシリーズのなかの野川由美子が自分は好きだ。

思いつくままに書く。大宮という男は軍隊の規律も戦争の大義もあまり理解してないが、軍隊生活のなかで恩義を受けた上官や同僚には必ず恩義を返す、そして弱い者にはめっぽう優しい。仰天すべきはそれが敵に対しても同じだというとこ。そこが、いい意味での「やくざ」。任侠の精神ある兵隊ということだろう。完全に自分の正義のためのみに生きている。これができれば人間は美しい。残念ながら人間という生き物は、歴史的には敵であれば女、子供でも虐殺してきたのだが…。

軍の上官たちが地位を利用して私腹を肥やすシーンがこのシリーズには多く描かれている。このシリーズは戦争の真実の姿を教えてくれている貴重な映画だ。そして、上官がそうであるのに、一等兵の大宮は軍旗を取り戻すために命懸けの働きをする。何をか言わんやだ。無類の女好きで、喧嘩上等の無軌道な男がなぜ軍隊を好んでいるか、真の理由をそこに見た。

ただ、本作は全体的に描いてるものがバラバラでまとまりがない。笑

今回は大宮が派手すぎて、有田上等兵の活躍が目立たないのが難点。

大宮が、日本が勝ってるのか負けたのかハッキリしないのに憤っていたが、あの台詞が自分は好きだ。戦略なき情報操作は能力ある者から活躍の場を奪ってしまうもんだ。