牛若丸と弁慶の「五条大橋の戦い」を「サイバーパンク」SF時代劇として描く…という怪作。
とはいえ、時代劇とSFは非常に親和性があるジャンルで着眼点の正しさが光っている。
逆に言えば、とても面白くなる材料が揃った映画であることに違いないのだが、そこに石井聰亙が撮ると、相変わらず「斜め上」になってしまうのが、また面白い。
本作ほど石井聰亙の作品の特徴というのがはっきりわかる作品は他にない。
予算も潤沢で、王道エンターテイメントをやる分において申し分ない座組でありながら、どうしても「作劇」においてドライブしない。非常に漫画的なディテールに加えて、セリフ回しもまた漫画的。
それをそのまま「芝居」として演出されているので、特に國村隼演じる阿闍梨が顕著だが、無言で成立するシーンを「これは、まさか!」といちいち悶絶し、説明までしてしまうので無粋に映る。
一方で、どことなく棒立ちなドラマ部分の演出に対してイメージを炸裂させるシーンは、相変わらずぶっ飛んだイマジネーションとケレンに溢れて凄まじい。
五条大橋での対決シーンのただただぶつかり合う刀から飛び散る火花が、宇宙に飛散、太陽に届くという飛躍は映画的で美しい。
逢魔の森におけるカメラを回転させ、酔うようなカメラワークからの弁慶(隆大介)と遮那王(浅野忠信)のサイキック対決のシーンや、捕縛された弁慶を巡って遮那王たち、湛塊 (船木誠勝)たち盗賊、平家の軍勢との三つ巴のバトルシーンの迫力など、映像的には撮影と編集の見事さが光る。
この天才的な画面作りと、編集の巧みさは石井監督のセンスが炸裂していてやっぱり嫌いになれない。
ただ、ドラマ部分の物足りなさよりも、どうしてこんなにセリフが聞き取りづらいのか。
それだけはとにかく観ていてストレスで仕方ない。