垂直落下式サミング

宮本武蔵 -双剣に馳せる夢-の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

宮本武蔵 -双剣に馳せる夢-(2009年製作の映画)
3.5
宮本武蔵を、当人の出自や宗教的価値観などのバックボーンから深掘りして、客観的な事実のみを繋げながら、その人物像を紐解いていく。アニメ映画っていうか教育テレビの歴史特番のような雰囲気ではあるのだが、元々はヒストリーチャンネル用に製作されたらしい。その切り口がなかなか面白い。
後世になってから大袈裟な尾ひれのついた逸話も多い人ではあるため、後世の創作物によって一般に広まった誇張を取っ払いながら、本人の実像に注目していくアニメドキュメンタリーは新鮮だった。
しかし、結局この映画も所詮は創作だ。青年・宮本武蔵は、取り返しのつかない何らかの罪を背負うことによって、巨大な喪失を抱えて生きていくことになるのだとする物語を構成しており、実在の人物の生涯をジジイ好みする主人公のオリジンを形作るストーリーの定型へと押し当てて、人の人生を矮小化しているようにみえるのは致し方なし。
史実にこだわるアプローチで、飽きるほど語られてきた胸踊る虚構から、史実の再現へと目を向けさせ、宮本武蔵の真の人物像、果ては真の武士道の何足るかへと肉薄していくわけだが、最後は「やっぱ武蔵はすげえ」に行き着くのがちょっと嬉しかったりする。