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少年の&yのレビュー・感想・評価

少年(1969年製作の映画)
4.0
【2015/6/1:イメージフォーラム】
わざと車にぶつかって怪我をし示談金を巻き上げる、当たり屋一家の「仕事の旅」を一家の子どもの目線で描く、一応ロードムービー、なのか。

若い時って、自分は絶対何者かになるんだ!と育った場所を飛び出し、でも結局何者にもなれず、平凡に生きることのエクスキューズをなんとか見出したりするものだけど、この主人公の「少年」は、まだ若者ですらない子供時代にすでに宇宙人を夢想し、でも自分は結局普通の子どもであることを幼い弟に嘆き、最北端の地で「もっと日本が広ければいいのにね」と呟く。これ以上どこへも遠くへ行けないこと、自分の住む世界の狭さ、言い換えれば「こういう風にしか生きられないこと」をあの歳で知った少年の絶望と諦観。

主演の子役は大島渚が孤児院で見つけた素人だそうで、この作品の後スターダムにのし上がるわけでも演技を学んで俳優目指したわけでもなく、映画界とは縁を切り元の孤児院に戻ったそう。まるで、ひとりで雪だるまを壊すように、宇宙人がいる世界に別れを告げたのだと思うと、子役の彼がすでに手にしていたであろう絶望と諦観が沁みるとともに、劇中の彼の眼差しが演技なんかじゃなかったことを確信する。

しかし劇中使われる「よさこい節」というのは、なんとも映画的な歌詞だなあ。

「土佐の高知の はりまや橋で 坊さんかんざし買うを見た」
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