一人旅

モード家の一夜の一人旅のレビュー・感想・評価

モード家の一夜(1968年製作の映画)
3.0
エリック・ロメール監督作。

二人の女の間で揺れ動く敬虔なカトリック教徒の男の心理を描いたドラマ。
室内を舞台にした会話劇が中心の作品で、哲学的であったり人生観や宗教観を交えた知的な会話の数々が特徴的だ。男(ジャン=ルイ・トランティニャン)は自身の貞操を重視し、無宗教者の女と部屋で二人きりになっても決して手は出さない。そうした男の態度を見て女は「はっきりしない男は嫌いよ!」と言い放つ。男の心の中に女に対する欲望が見え隠れしているのに、自身の信仰心に縛られなかなか素直になれないのだ。主義や信仰心を重視する堅苦しい男が最後に見せる優しい言葉は、非常に人間的であり温かい。男にとって自身がこだわり続けてきた理屈よりも相手の感情を優先した末に思わずポロッと出た初めての言葉であり、自身の主義や信仰心の殻を打ち破った瞬間でもある。
一人旅

一人旅