はぐれ

モード家の一夜のはぐれのレビュー・感想・評価

モード家の一夜(1968年製作の映画)
4.5
エリック・ロメールの『六つの教訓話』の第3作にしてロメールの最高傑作と呼び声の高い本作。

あまりに濃厚なテキスト。あまりに精密な会話劇。俳優達の一言一句、一挙手一投足を見逃したくなくて気付いたら身を前に乗り出して画面を食い入るように見ていた。ホント映画ファンにとっては至福の時間。

敬虔なカソリック信者の男が頑なに守り抜いてきたそのエゴイズムの極致とでも言うべき信念を捨て去るまでの物語。そのただ1点へ向けてセリフ、演技、音響、カメラ、シーケンス、プロットが無駄なく積み上がっていく過程がパーフェクト。その頭の中に積み上げられたイメージの建造物があまりにも美しい佇まいで思わず畏敬の念を抱いてしまう。そんな作品。

2人の女性と過ごす対象的な一夜。どちらも肉体関係なんて持ってないのになんてエロチシズムを感じさせるのだろう。据え膳を食わなかったヘタレと言うよりは変わり者の男に救われるヒロインの微笑。あの表情を拝むためにこの映画は存在するのかも。
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