冷蔵庫とプリンター

モード家の一夜の冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

モード家の一夜(1968年製作の映画)
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 傑作。人生は愛と偶然の戯れのようでありながら実際は決断の連続、すなわち賭けであるというロメール先生の教え。これは後に教条からも確率論からも解放された自由な女に天文学的確率の賭けをさせる『冬物語』へと発展することになるのだが、今作の方が主人公の制約が多く(教義、主義など)それらを乗り越えることによって生じるカタルシスがより感じられた。
 言外で語る"タッチ"の上手さも光っており、主演のトランティニャンが毛布で体をぐるぐる巻きにして聖人ぶりながらファビアンの隣には行くシーン(「はっきりしない男は嫌い」とフラれるところも良い)や、部屋にマッチがないことを口実にバローの部屋に取りに行きたいけど、一応ホントにマッチがないか棚の中も入念に調べておくみたいな演出が良い。(その後のドアの期待感も良い)しかし最後の最後に唐突にモノローグを用いて説明してしまうところは蛇足でしかなくて少し残念。