みーちゃん

秋日和のみーちゃんのレビュー・感想・評価

秋日和(1960年製作の映画)
4.0
小津安二郎の作品は若い頃に何作か見たが、これは観ていなかった。色々見直したり、初めて見たり、マイペースで楽しみたいと思ってる。

私は、あの男三人衆の言動がユーモラスというより嫌悪で、彼らが少しやり過ぎというか出番が多すぎる気がしないでもない。家でも職場でも街でも、性別によって社会の役割がはっきり分かれているのが印象的だった。

そんな、時代によって移り変わっていくことと、いつまでも変わらない美しいもの、失くしたくない大切な価値観など、普遍的なテーマが際立つ。この際立たせ方に唯一無二を感じる。

私も娘がいるので原節子には感情移入しまくりだが、今回のレビューでは三輪家のことは置いておくとして、同僚の百合ちゃんが、あんなに親身になってくれるのは他人事じゃないから。アヤ子にとっての心残りが母親なら、百合ちゃんにとって、それは実家の寿司屋じゃないかな?
彼女は父親が握る寿司と、あの気取らない居心地の良い空間を愛していて、どうやら一人娘っぽい。もし自分が結婚して家を出たら、お店の行く末はどうなるんだろう。でも、婿養子をとって寿司屋を継ぐのが自分らしい生き方とも思えない。…なんて漠然とした思いを巡らせながら、この結婚騒動に自身の将来を重ねていたような気がする。

色々な見方ができる、永く観るに耐える、ニュートラルポジションで作られた映画だと改めて思った。