ひろ

秋日和のひろのレビュー・感想・評価

秋日和(1960年製作の映画)
4.0
監督は小津安二郎、脚本は監督と野田高悟の共同執筆によって製作された1960年の日本映画

“父と娘”、“結婚”というのは、小津安二郎が描き続けたテーマだ。「晩春」はその究極型だった。この作品でも“結婚”を描いているが、異色なのは“母と娘”を描いていること。「晩春」の母娘バージョンとも言われている。

茶の間や廊下をローポジョンの固定カメラで撮影し、人物を超ローアングルから撮って立体感を出す“小津調”と言われる撮影スタイルは、初めて観た時は違和感を感じたけど、何作品が観たら、小津作品には欠かせないものだと理解できた。

最も重要な母親を演じた原節子。小津作品で娘を演じてきた原節子が初めて母親役を演じている。40代になってますます上品な輝きを増しているが、小津監督が亡くなった後に女優を辞めてしまったからもったいない。

アヤ子役の司葉子とその友人役の岡田茉莉子という昭和の大スターの初々しい姿も必見。中井貴一の父親である佐田啓二はやっぱり似た者親子だ。佐分利信と北竜二と中村伸郎の三人組のコミカルなやり取りは面白かった。小津監督に見いだされてデビューしたばかりの岩下志麻が端役で出演している。

何度も同じテーマで作品を撮っているのに、どれも違っていて面白いんだからすごすぎる。“結婚”というテーマはいつものことだが、“母と娘”はこの作品の特徴なので注目して観てほしい。ラストの寂しさと喜びを兼ね合わせた母親の表情は素晴らしかった。
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