ジェルボール

私は「うつ依存症」の女のジェルボールのレビュー・感想・評価

私は「うつ依存症」の女(2001年製作の映画)
4.1
ルーリードが出演していて観た。それ自体はほんのさわりで、どうということはなかったし、しばらくは映像のテクニカルな面が目についてしまったが、内容の方に引き込まれた。

邦題のつけ方に疑問がないわけではないが、原題もProzac Nationで、抗うつ剤の作用と副作用を説明するような帰結にはなっているものの、何気ない日常での、人間関係のもつれや断絶、プロザックなしには出口が見えなくなるような現代的な状況を余すことなく描いているというか、自分の人格的にも、言動が極端でかえって台無しにしてしまう主人公が他人事には思えず移入してしまった。

ルーも単なるドラッグソングではなく、都市とひとの孤独や疎外感、規範から外れて周辺で生きる多彩な人間模様を描いたソングライターであり詩人である訳だが、当初はこの映画の時代状況とリンクせず、多少の違和感はあったものの、ちゃんと内容をみて出演OKしたんだろうなと思えるぐらい、ぎりぎりのところで規範を踏み外してしまうひとの姿がリアルに描かれていて、普遍的な内容だと思った。

この映画で歌われるのはPERFECT DAYだけど、制御ができない女性を歌ったLADY DAYという素晴らしい曲があって、その曲が脳裏を掠めた。
80年代以降も本当に素晴らしい曲が多いので、それを取り扱って欲しかったという気も多少はする。

あとメイン画面でループされる、テーマのギターとストリングスが、いつまでも聴いていたくなるくらい、どこまでも優しくて、とてもいい。