ききけ

私は「うつ依存症」の女のききけのレビュー・感想・評価

私は「うつ依存症」の女(2001年製作の映画)
3.9
クリスティーナ・リッチを観に。

小さい頃から周りに馴染めず、父親は入れ替わり、母親との確執を持つ。爆音の音楽で世界を遠ざける彼女。やる事成すことが全て悲劇に変わり、もはや何もしない方が良いのではと思ってしまう。やっと出来た彼氏も、不安定な自分が求め過ぎるが故に、離れてしまう。なんともリアル。

原題の"Prozac Nation"のProzacは抗うつ薬の名前。アメリカ合衆国にはそれに依存する人々で溢れかえっているという趣旨なので、邦タイトルは、ちょっと如何なものかと。

"愛する人と共になるには、殺して、砕いた骨を吸う以外に方法は無い"、という台詞が彼女の愛に対する歪んだ向き方を表していて、良かった。自分を愛してくれる人を、何故か突き返してしまう。不安からか、完璧主義からか、そうして自分から周りの人達を失っていく。

鬱に対する意見として、彼女はヘミングウェイからの引用として、"Gradually, then suddenly"(徐々に、そして突然に)を使う。元は破産に対しての文章だが、これは的を射ている。鬱というのは向こうから勝手にやってくるものだ。それでも、周りからの理解を得られるのは難しい。本作では、一人の、一つの、困難・苦悩があった。

あと、彼女の部屋に『タクシードライバー』のポスターがあったのだが、これを背景にした父親との場面で、「誰に向かって話してると思ってるんだ」という台詞。笑っていいところ?しかし、いい趣味してるなぁ。他にもラスト辺りで、『素晴らしき哉、人生!』の引用をしていて、もう、堪らんね。
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