実は貴重な天知茂の単独主演映画(新東宝だと誰かとコンビで主役扱いにされ、フリーになったら二番手三番手になるかトメ扱いばかりのため)。
企業の特殊工作員という産業スパイのようなでも実際のところ会社の裏仕事をやらされる天知茂の活躍を描いたドラマだけど、話の中身はあまりにも通俗かつお手軽なのでどうでもよくなってくる。むしろ全盛期の天知のその美しい顔立ち、声、アクション、メリハリの効いたお芝居は充実しているのでそうした彼の魅力を楽しむ作品だと割りきった方が面白いかも。天知の歌うテーマソングもそういした天知のイメージ映像のような作風を更に盛り上げる。
でも監督が監督だけにエロチックな雰囲気が漂い、たびたびエロ絡みのエピソードが登場するのに肝心の天知茂がどこか照れて演技しているところがあるため作品の中で浮いてしまっているのが残念。若い頃のひたすらエロい野川由美子やエロ爺を演じる殿山泰司などほかの役者がちゃんとアダルトな演技をやっているだけにそうした印象が強くなってくる。あと天知さん女の子とベッドインするのに上半身脱がないし、女の子を抱くときぎこちない抱きかたをするので見てるこっちが恥ずかしくなってくる。天知茂は長谷川一夫のような二枚目路線を目指していたようなのでこういう演技は苦手なのかも(そのくせ後年日活ロマンポルノで変名を使って監督をやってるけど)。それでも顔で魅せる演技はキレキレなため主役としての存在感はあるし、珍しいお茶目な演技も可愛い。
左とん平の堂に入った馬鹿息子っぷり、真面目な警官を演じるゾル大佐こと宮口二朗といった脇役の演技も見所。あと天知とは同じ新東宝の俳優だった高宮敬二が状況によって天知の敵となり味方となる美味しい役を好演している。
原作者でもある佐賀潜の素人とは思えない堂々とした悪役っぷりも印象的。