ダイナ

悪魔のいけにえのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

悪魔のいけにえ(1974年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

チェンソーを振り回す殺人鬼レザーフェイスが若者を恐怖のどん底に叩き落とす1974年公開アメリカホラー映画。

男女5人が墓参りの道中で殺人鬼に襲われるという話。男3内1人は車椅子、女2は格好がセクシーでこれぞホラー映画の女登場人物といった感じの構成。女子が占いで運勢が悪いだの不吉だのあからさまなフラグを立てる所もホラーのお約束要素。車椅子の青年フランクリンは、1人だけグループで孤立していたこと、写真を撮られ切り付けられといった、怪しいヒッチハイカーとの接点があったことから本作のキーマンになるかと思いきや4番目に殺害され(その後特に現れることもなく)最後に残るのは女子サリー・ハーデスティ。彼女の絶叫っぷりと演技が凄まじく、PTSDものの状況に放り込まれながらまさか逃げ切るとは。やはり人間大事なのはスタミナでしょうか。

なんといっても殺人鬼レザーフェイスの存在が魅力的。突然に現れ数秒で最初の殺人を犯すインパクトにギョッとします。レザーフェイスは扱うメイン武器がチェンソーで四肢切断描写は覚悟していたのですが、そのような描写、流血表現はとても抑えられていました。人体をフックに吊るす、チェンソーで切断するシーン等は直接映されずスプラッター要素が薄いのは間口を広げるためか予算の問題かは不明ですが、恐怖の演出には問題なし。チェンソーを構えたレザーフェイスのかっこよさがたまりません。吹かして追いかけてくる威圧感の半端なさは弩級でして、終盤チェンソー振り下ろしたら普通に当たりそうなくらい距離ビタでサリーを追いかけるわけです。「金槌だけ持って走った方が早くね!?」なんてツッコミは野暮。チェンソーかっこいいから手放したくないのはしょうがない。もしかしてガソリンスタンドに誘導するためだったのかも?

衣装替えしていたのは何かの儀式だったのでしょうか。オタオタして頭抱えて考え事してる姿や、兄貴達が帰ってきてからのオドオド具合、兄貴に手伝ってくれって言われて駆けつけて爺様を一緒に運ぶ所、爺様の食事を介抱して肩をポンポン叩く姿、中盤猛威を奮っていた殺人鬼とは思えなくらい縮んだ様子がとても可愛らしい。(最初爺様死体かと思ったらまさか生きてるとは)その後の爺様に金槌持たせて振らせるのに何回も失敗してるのも笑えます。

食卓囲んでサリーが絶叫、他3人が「フォー!」って盛り上がってる最低なシーンも面白いのですが、本作の最大の見せ場はサリーが家を脱出した後。外は白みかかっていて夜が明けた様子。明るい外の中追いかけてくるイカれた兄ちゃんとレザーフェイスの恐怖。明るい映像の中で行われる恐怖というのは近年でいうとミッドサマーが思い出されます。ここからの展開は怒涛で、こんな終盤で新キャラが出てくるのは予想外だし、盤面の引っくり返り方含めカオス。特にラストシーンが滅茶苦茶好きです。溢れ出る殺意の衝動か、兄貴を失ったことの悲しみか、取り逃したことへの憤怒か、太陽をバックにチェンソーを振り回すレザーフェイスが何を考えているのかはともかくただただ格好いい。一般人が大量に死に辛うじて1人逃げたという後味が悪く感じるはずのエンディングなのに美しさというか清々しさを感じます。

映像が綺麗だったら、スプラッタ表現が濃かったら、これらが本作にとってプラスになるかは想像がつかない不思議。そう思うくらい完成されている印象。とても面白かったです。
ダイナ

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