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バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓びのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【世界にバレエの種を蒔く】

レンタルDVDでみていたが未投稿でした。今回、山村浩二の『サティの「パラード」』を劇場でみて…そういえば本作で、元ネタの「パラード」公演に触れていなかったか…と気になり、久しぶりに再見。

かつて一時代を築いたバレエ・リュスの“後半生”を追ったドキュメンタリー。誕生100周年に開かれた同窓会に合わせ作られたようですね。

登場する元ダンサーが爺ちゃん婆ちゃんばかりですが、貴重な生き証人による貴重な記録でしょう。制作中に、創設者セルゲイ・ディアギレフの時代を知る最後のダンサーさんが亡くなったそうですが…。

主にディアギレフ亡き後のバレエ・リュスを追ったもので、その時代だけでもドラマティックで、関係者も情報量も膨大で、一度みただけでは咀嚼できないのでは。それだけ、ドキュメンタリーとしての資料価値も大きいわけですが。

外野の立場で面白いのは、やはり組織の内紛と、そこからの波及です。

ディアギレフ後はずっと、二つに分かれ対立を繰り返していたようですが、例えばアメリカ大巡業を逃した側が…負け戦のように…オーストラリアに行ったり、或いは別の事情から南米に行ったり…した結果、未だバレエが根付いていない地に、バレエの種を運び蒔く結果となっている。彼らは世界のタンポポだったという歴史の不思議。

存続のため、自らアメリカナイズされてゆく経緯なども、泣けますが興味深い。ハリウッドとの接点は面白いですね。肉食系美人ダンサーが、ハリウッドスターたちと下半身ネットワークを築いちゃった?とか(笑)。

個人的には、誠実そうなマーク・プラットの『今宵よ永遠に』出演エピソードが収穫。リタ・ヘイワース出演作で一番好きな映画になりました。

振付師にセシル・B・デミルの姪であるアグネス・デ=ミルを迎えたのも、映画界との接点と言えるかな。…ダンサーは見るからに大変だったようですが(笑)。

記録映像は貴重物件揃いですが、画質は悪くとも、ダンス公演で時に光るものが見つかります。ベイビー・バレリーナのエピソードなど、“困った時の少女幻想”は万国共通なのだなあ、とちょっと可笑しかったです。

因みに、『サティの「パラード」』には一言も触れていませんでした(笑)。ディアギレフ時代のものだから仕方ないか。

しかし美術絡みだと、ダリが参加した『バッカナール』記録映像が一番美味しかったです。爆笑裏話のオマケ付きだし。これ、再現公演しないものかと思いました。

<2017.8.17記>
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