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続・荒野の用心棒のpsychedeliaのネタバレレビュー・内容・結末

続・荒野の用心棒(1966年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭, 泥土に塗れた砂漠を一人の男が棺桶を引きずりながら歩いている。
次の場面では女が鞭打たれている。下衆な笑いを浮かべた男達が縛られた女を取り囲んでいる。鞭が振り上げられること何度目か, 突如銃声が立ち, 男達が倒れる。観客は当然, 棺桶の男が女を助けたのだと思う。ところがその期待は外れる。川向こうから赤いスカーフを巻いた男達が女のもとにやって来る。女を拷問していた連中を撃ったのは彼らだったのだ。女の味方だろうと思う。しかし彼らも「メキシコ人に寝返った罰だ」などと言って, 女を十字架に掛けて焼き殺そうとする。観客の頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされる。そこへ棺桶の男が現れる。悪党とのありきたりのやりとりの後, 電光石火の早撃ち....

この導入部は『荒野の用心棒』よりもよく出来ていると思う。「前作」では町に巣食う二つの勢力の対立がセリフで説明されていたのに対し, 本作では一見めちゃくちゃな導入部によって「ああ, なんか敵対する二つの組織があるんだな」ということを活劇らしいアクションで匂わしている。この差は大きい。

こういう古典的な活劇が無くなったのは残念だと思う。初めの出会いの時点で, マリアがジャンゴを好き, ジャンゴも彼女を愛しているのが分かる。凝った表現が無くともしっかりと描かれている。「わたしは嬉しかった。わたしを助けてくれた時, わたしを愛してくれたのだと思えて」という単純極まるセリフがこれ以上ない美しい響きを帯びる。同時に, その単純さが彼らのこれまでの人生の過酷さを物語ってもいる。

『殺しが静かにやって来る』といい, セルジオ・コルブッチはそういう地獄の中の愛を描くことに冴えた腕を見せる人らしい。クサいまでに形式的な愛のドラマが, 活劇として堅実な構成の中に畳み込まれていることで, 単なる劇画の面白さに留まらないリアリティを持つことに成功したのだろう。美しい映画だと思う。
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