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恋の手ほどきのEhrvmのレビュー・感想・評価

恋の手ほどき(1958年製作の映画)
5.0
矛盾し、対立し、すれ違いあう思惑、信念、計略、感情、先入観、価値観、決断、妥協、合意が複雑に入り乱れ錯綜するという意味でのまさに政治的な映画。優れたエメラルドには内部に別の色が走っている。ジジがガストンと社交界デビューする時のドレスは同じくミネリの『ボヴァリー夫人』で、初めて貴族のパーティに呼ばれたときのドレスと極めて似ている。
プロダクションコードとの折衝として、愛人ではなく結婚を選びとる物語として審査を通したが、完成した映画は結婚にも関心がなく、決断すること自体に価値を置いている。ジジこそがガストンを教育し、噴水の前を馬車が通るときのまばゆい光が、ガストンの実体をシルエットにまで引き戻し、彼を生まれ変わらせ決断させ教育を完成させる。登場人物の誰もが当初は予期しておらず望んでいなかった形にもかかわらず、ハッピーエンディングを迎える。自らの老いを祝い、恋愛への執着から脱したシュバリエだけが、この破格の複雑極まる物語を閉じることができる。
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