残像

酔っぱらい天国の残像のレビュー・感想・評価

酔っぱらい天国(1962年製作の映画)
4.0
驚いた。何の気なしに見たのだけれど、これが素晴らしかった。不勉強にも渋谷実監督は初めまして。これからはお名前を見かけた際にはチェックさせていただきます。

まず、笠智衆が素晴らしい。小津演出の笠智衆に見慣れすぎているせいもあるだろうが、この俳優の持つ存在感、また優れた身体性に驚いてしまった。怒鳴り散らす、暴れるというアクションをしても、どこか上品でコミカル、嫌な感じがしない。と言ってコミカルがすぎることもなく、絶妙なあんばいである。

そして撮影、美術が素晴らしい。あの荒涼とした空間。胸をざわつかせるような余白。横長のモノクロの画面がやたらと白く見えて、妙に不安を煽る。

この画面の感じはロバート・ロッセンの「ハスラー」に近いな、なんて思いながら見てたら、ラストでもロッセンの「リリス」を想起させるシーンが。「ハスラー」はほぼ同時期、「リリス」は2年後の公開なので、どちらも参考にしているわけではないはずだけど、似てる。同時代の共時性ということなのかな。興味深い。
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