らんらん

「青衣の人」より 離愁のらんらんのレビュー・感想・評価

「青衣の人」より 離愁(1960年製作の映画)
4.7
一人の男(佐田啓二)をめぐる二人の女(岡田茉莉子、桑野みゆき)のねちっこい争いを描く

【あらすじ】
佐田啓二は琵琶湖の観光船で乗り合わせた美しいお嬢さん(桑野みゆき)が虚げなのが気になっていました
案の定桑野みゆきは下船後崖にたたずんでいたのでとにかく保護することに
どうやら色恋沙汰のお悩みでヤケになっての気の迷いだったみたいで、親戚の叔母様が迎えに来てくれるとのことで一安心
で、迎えに来た叔母様というのが岡田茉莉子、佐田啓二とはかつてほのかな恋を通わせた相手だったのでした
この出会い、再会をきっかけに佐田啓二をめぐって桑野みゆきと岡田茉莉子が女のバトルを繰り広げます!

【感想】
凄く良かった!今年まだ映画をあまり見てないけど今年一!
女同士のバトルって書くとドロドロとか、ヒステリックな感じをイメージしちゃうんだけど
この映画では心では激しくも表面上は常に平静にって感じの心理戦が展開されます
岡田茉莉子も桑野みゆきも上流家庭の人なので言葉遣いは常に丁寧
「アタクシ〜デスワ、マスワ、カシラ」「ソウデスノ、〜シマシタノ」「ヤダワ、〜ラシタノ?」等々、現代では絶滅種の話し言葉をマスターしています

桑野みゆきは岡田茉莉子を常に「叔母様」と呼んでいますが年齢差はたぶん5つくらい
岡田茉莉子は若くて美しくて優秀で、みんなに羨望の目で見られていて、それに対する憧れと同時に嫉妬もあって、私だって!っていう対抗心から張り合っちゃうみたいな?

ほんと凄かったなー、二人のやりとり、かけひき、その一言一言ドキッとします
お互いがそれぞれ上位に立とうとして「うふっ、うふふ」てニャッとするところなんかほんと怖いわー

ジャンルとしてはメロドラマになるんだろうけど、常に緊迫感があって先の展開が予想できない、サスペンスを見てるみたいだった
そんなバトルの末の結末もいい落としどろこだと思います
佐田啓二からするとあんたら何だったの?弄ばれたの?みたいなお話だけどw

ちなみにDVDでの鑑賞
佐田啓二ベストセレクションとか書いてるし、表は佐田啓二のアップの写真だしで佐田啓二が主演かと思ってたら違ってたw 騙されたわー

ということで岡田茉莉子、桑野みゆき、佐田啓二がメインの映画なんですが
他に印象に残った点をメモ
岡田茉莉子の義母毛利菊枝の恐ろしい貫禄、こんな時代から既に家政婦をしている市原悦子
最後に、この映画は井上靖の「青衣の人」ってのが原作らしいんだけど、ここまで女性視点で女性心理を描けるのって凄いなーって
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