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銀座の恋の物語のodyssのレビュー・感想・評価

銀座の恋の物語(1962年製作の映画)
2.5
【差別語狩り反対!】

(以下のレビューは、2014年にNHKのBS2でこの映画を見た直後に某映画サイトに投稿したものです。現在某サイトは消滅していますので、ここでしか読めません。また、差別語の音声を削除していたのは当時のことで、その後変更がなされている可能性もあります。)

石原裕次郎と浅丘ルリ子主演の、昭和37年の映画。最近BS録画にて鑑賞。

冒頭、裕次郎が人力車を引いて銀座を駆け抜けるシーン。早朝にでも撮影したのでしょうか、ひと気がありません。まだ路面電車の線路が銀座通りに敷かれていた時代。

裕次郎は、体調不良で仕事ができない人力車引きの知人に代わって引いていたという設定。ということは、昭和37年の東京にはまだ人力車が実際にあったということですかね。

裕次郎は銀座近くの裏町に部屋を借りて友人ジェリー藤尾と同居している。裕次郎は美術を、ジェリー藤尾は音楽を志している。若い二人はまだ一般に認められるところまでいっていないけれど、夢を抱えた若者同士の生き方がしっかりと示されています。

そしてその部屋と通りをはさんで向かい側の裁縫店に勤める若い女性が浅丘ルリ子。彼女と裕次郎は将来を誓い合った仲なのですが、美術を志す裕次郎には安定した収入がないので、結婚には至っていない。実は裕次郎は或る美術系の会社から来ないかと誘われているのだけれど、会社勤めをしてしまうと自分が本当に描きたい作品を手がけることはできなくなってしまうという恐れを抱いている裕次郎はその誘いを断っているのです。

しかし愛する男といつまでも結ばれない浅丘ルリ子にはそれが不満。それがもとで二人はケンカをしてしまいます。が、まもなく仲直り。このあたりで、O・ヘンリーの『賢者の贈り物』を模倣したかと思われるエピソードが出てきます。

が、そのあと物語はやや唐突な展開を見せます。ネタバレになるのでその点には触れませんが、ちょっと「うーん」かなと思いました。

浅丘ルリ子はこの映画のとき22歳。実に魅力的だし、どこか少女時代の面影を残しているところも捨てがたい。彼女は吉永小百合、大原麗子と並び昭和戦後の三大美人女優だというのが私の持論ですけど、あらためて本物の美人だなと思いました。

話は変わりますが、この作品、NHKのBS録画で見たところ、途中セリフが飛んでいるところが何カ所かありました。それについては放送の最初と最後でも断っており、要するに差別的な表現だからということなんでしょう。しかし、こういう措置は作品の鑑賞の妨げになることはもちろん、本当の意味で差別をなくすことにつながるとは思えません。カットされているセリフはジェリー藤尾のものに集中しており、おそらく「合いの子」などの言葉だと思われますが、「合いの子」を「ハーフ」と言い換えれば差別がなくなるわけでもないでしょう。書籍などではこういう場合、昔の表現をそのまま保持するために断り書きを入れるものですが、NHKはその逆をやっている。むろん、テレビと書籍では見る(読む)人の数が違うなどの理由はありますが、昔の表現にはその時代なりの真実味があるわけですから、NHKがこの点で見識を改めるよう希望します。
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