イワシ

トラックダウンのイワシのレビュー・感想・評価

トラックダウン(1976年製作の映画)
5.0
超傑作!一時もB級映画であることをやめない面白さ!黒沢清が言及したエレベーターを昇降させながらの銃撃戦も凄まじいけど、それ以外も西部劇の様式に則った非常にカッコいいアクションが連発する。チンピラを縄にかけ屋上に引っ張りあげ、真正面から走って来る車に向かって銃を撃つジム・ミッチャム!

物語は『ハードコアの夜』と全く同じなんだけど、カレン・ラム扮する妹の様子が、妹を探す兄に並行して語られる。チカーノ・ギャングにレイプされ、売り飛ばされるも、親切なコールガールに出会い、彼女と同じように働こうとするも……。悲劇に過度に傾斜しないスピーディさが素晴らしい。

そしてジム・ミッチャムの復讐もまた、執念やら情念やらがドロリと表出することはなく、都会を舞台にしたカウボーイのマンハントとして演出される。ここらへんは好みの問題だと思うが、アクションの運動性にひたすら特化した演出は安定して質が高い(B級映画として)。

手持ちカメラの使い方が熟達してる。格闘シーンは凄く見やすい。LAのロケもかなり慎重に場所選びしていて、細部まで充実した画面が続く(ギター工房内のショットが良い)。ハイウェイでの対決において、広大な土地と対峙する者の距離を意識した西部劇的なロングショットが絶品。

黒沢清を意識して観るなら、段ボールが頻出してるのも注目だよなあ。ジム・ミッチャムがなぜか女装した黒人三人と殴り合いするシーンはもちろん、敵の陣地にトラックで突っ込むド派手なシーンにも段ボールの存在が。お金が無くても派手なシーンを演出するのはB級映画の基本精神。

エレベーターのシーンはやっぱり最高。銃撃戦はあくまでアクシデントで、敵のボスがいるホテルの最上階に侵入するのが本来の目的なんだけど、エレベーターとカメラの動きが連動した垂直運動のカメラワークがほんとに素晴らしい。
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