Ricola

パームビーチ・ストーリーのRicolaのレビュー・感想・評価

パームビーチ・ストーリー(1942年製作の映画)
3.9
いっけなーい!結婚式間に合わない!なカップル。それぞれ急いで準備してなんとか式に間に合ってめでたしめでたし…から、物語は始まる。
それから5年後…
「長年わたしはあなたを暖める毛布だった」
「愛が消えて残ってるのは思いやりだけ」
そんなふうに妻は言うようになる。
そして妻は家を飛び出し、夫は追いかける。


テンポが良くスピード感のある作品という印象を冒頭から受けるが、物を壊すことが繰り返され、作中にインパクトを残す。
ウズラ猟のおじいさんたちは酔っ払って銃を撃ちまくって車内のものを次々と破壊し、ジェリーは故意ではないにしても富豪のハッケンサッカーのメガネを2度割ってしまい、夫婦の約束事であった恋人の置き物を夫のトムは壊すなど、何かを破壊するシーンが見られる。
この作品においてその行為というのは、それぞれの人物の関係性に変化が生じる前触れもしくは結果として起こっているのだ。ウズラ猟のおじいさんたちはジェリーを仲間に迎え入れ酔っ払って距離が縮まった結果銃をぶっ放し、ジェリーもメガネをきっかけにハッケンサッカーとお近づきになるし、トムの破壊行為も決意表明である。

主人公の夫婦はまさに喧嘩するほど仲がいいを地でいくタイプ。意地を張って口論からなかなか抜け出せないときには、口は閉じて流れに任せるのがいいみたい。
ジェリーはドレスを脱ぐ際に背中のファスナーを下げられなくて彼に頼むしかない。つまりは喧嘩してても彼に近づくしかないのだ。お互い自分の気持ちに素直になるのには、そういったコミュニケーションが円滑に進める場合もある。
キスされてつま先がキュッと上向きになるのなんて、とってもかわいい。

破壊が人と人との距離を縮める間接的なコミュニケーションとして機能していることを示しつつ、やはり夫婦仲をとりまとめるコミュニケーションは言葉よりも身体的接触が効果があるようだ。
ちょっとセクシーだけど全てを見せない粋な演出にドキドキもする作品だった。
Ricola

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