emily

ずっとあなたを愛してるのemilyのレビュー・感想・評価

ずっとあなたを愛してる(2008年製作の映画)
3.7
 6歳の息子を殺害した罪で15年間服役した後、ジュリエットは妹のレアの元に身を寄せることになる。なかなか就職先は見つからず苦戦するが、過去ではなく人間性を周りの人たちも見てくれ受け入れ始める。そんなレアも姉の罪により自身の子供を産むことができず、養子の子供を二人育てていた。そんなある日、事件について何も語らない姉の真実が明かされる秘密を発見する。

 冒頭はジュリエットが不穏な顔でレアの元を訪れるシーンから始まる。二人はそっくりでどこからどう見ても姉妹に見てる。久しぶりの再会にレアは嬉しそうである。何も語られないまま日常をこなしていく中で、ジュリエットの犯した罪やその性格が徐々にこぼれ始める。人々は突如現れた姉の存在に興味を降り注ぎ、きわどい質問を投げかけてくる。レアの娘もその一人である。不愛想であまり喋らないジュリエット、そうすることで人々との関係を断ち自分を追い詰め15年生きてきたのだろう。子供たちと接する中で、徐々に本当の優しさが自然に出てきて、それをいち早く察知するのは子供なのだ。純粋な目で嫌いだったおばの虜になる。

 それは観客にも同じなのだ。何か罪を犯したであろうことはすぐわかる。徐々にその罪が明かされていくが、ジュリエット自身は素っ気なさより、その奥にあるぬくもりや人を思える心に惹かれていく。ジュリエット演じるクリスティン・スコット・トーマスの秘める優しさの演技、周りを排除すればするほどそこに流れるぬくもりを感じさせる絶妙な人との距離感と、その間に流れるほのかな笑顔がすべてを物語らせる、繊細な演技を見せてくれる。

 年の離れた妹レアとの距離感も厚かましさがなく、徐々に人々の隙間にするっと溶けるように入っていくジュリエットが絶品だ。気が付いたらみんな彼女が好きになってる。妹とはいろんなところを散歩し、過去を探るように時間と距離を埋めていく。しかしそんなことも超える妹のあこがれと絶対的信頼はジュリエットに心の平穏をもたらすのだ。ずっと味方でいてくれる人、何があってもそばにいなくても、世間が敵になって味方でいてくれる人・・それは家族である。だからジュリエットも家族の元に戻った。自分のことをわかって欲しい。自分を認めてほしい。そうして自分の存在を認識したい。

 窓に降り注ぐ雨がその罪を洗い流すように、二人の心を洗浄していくように、そうして周りの人との距離も埋めるように、やっと自分の存在を胸を張って言える。一番わかってほしい人にわかってもらえ、心が溶かされていく。15年耐えてきた時間は無駄ではなかった。真実は冒頭の張りつめた糸ほど大きな物ではない。しかしそれは物語が進む毎、なんとなく想像ができる事実である。すべての奥には愛が潜んでいることを知ったとき、すべての行動が愛おしく、ぬくもりを感じずにはいられない。
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