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チャンピオンのmayaのレビュー・感想・評価

チャンピオン(1949年製作の映画)
4.8
よくぞこんな嫌われ主人公描き切ったな!とテンション爆上げだった。こういう美しくて愚かなチャンプとか大好物ですね...

自由でありたいという願いただ一つを貫くために、彼を愛する人たちに愛を返せない拳闘家、「チャンピオン」の名にふさわしく傲慢で野心的で身勝手でチャーミング。「栄光のために全てを犠牲にした男が、最後に全てを取り戻す」みたいな大筋を組んだ上に、決して変わらない彼の本質と、後戻りすることのない運命の一直線が綺麗に悲劇へと彼を導いている。「ああすればよかったのに」という分岐点はあるようでありえず、彼はチャンピオンになるべくしてなり、チャンピオンのたどる運命はあの結末しかない。素晴らしいプロットだと思う。
あと、今まで見たボクシング映画の中で、ロッキー含め、1番ちゃんとボクシングしてた。主演の身体が凄すぎる...
「俺は生まれて初めて人に期待されたんだ」って、なんで寂しいセリフなのか。ミスターと呼ばれたい、貴様と呼ばれるのはもう嫌だ、皿洗いや瓶運びなんかごめんだ、人に所有されたくない... 何も彼1人の特殊な欲望でなく、人がきっとだれしも持っているが、実はその願いは「周囲の人間と愛し合う」「特別な絆を結ぶ」ことがもたらす不自由と衝突してしまう。絶対に人間の物語としては悲劇になってしまう。ものすごくジャック・ロンドン的なエッセンスのあるタイプのボクシング映画だと感じた。
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