TnT

堅々獄夫婦庭訓のTnTのレビュー・感想・評価

堅々獄夫婦庭訓(1965年製作の映画)
3.6
 ブリジット・バルトー、アラン・ドロン?!が出るカチカチ山の物語。というわけわからなさと横尾忠則の謎世界を垣間見る。彼のアニメーションは同時期に2,3本撮られたのみで貴重だ。その世界観はハリウッド映画を幼稚に受け入れたものとなっているのも面白い。彼はただ純粋にイメージを愛してるというのがわかった。

 3年前に亡くなっているマリリンモンローもクレジットされているが、なんとこれがウォーホルがマリリン関連の作品を作るのよりも着手しているのが早いという。またご詠歌が終始響く異様さは横尾忠則死生観が滲み出ていて良い。死んだマリリンが生きた役者と共演するという幻想がしれっと行われる今作は、アニメーションの動きこそ乏しいものの挑戦的である。未読だが去年あたりに出た彼の著書「原郷の森」は、死んだ有名芸術家たちと出会う横尾忠則という、ダンテの「神曲」に倣ったかのような構成になっているそう。こういう好きな有名人らと出会うという市民的なノリ/欲求を、今作の時に既にルーツとして持っていたと読み取ることはできるだろう。

 wikiで見ると、横尾忠則は今作制作年に三島由紀夫と出会い、2年後には寺山修司の天井桟敷に参加し、さらに2年後は大島渚の映画に出ている。このあまりにも死を恐れた画家は、何故か漲る生命力溢れる作家芸術家あたりとすごい交流を持っている。こういうところ運だなぁと思う。
TnT

TnT