アニマル泉

悲愁物語のアニマル泉のレビュー・感想・評価

悲愁物語(1977年製作の映画)
4.5
清順が日活を解雇されて以来の10年ぶりに松竹で撮った復帰作。原作・梶原一騎、脚本・大和屋竺、撮影・森勝、美術・木村威夫。しかし不入りで公開2週間で打切りになる。清順は常にこれが最後の作品かもしれないという覚悟で作っていたという。だから「何でもやっちゃえ!」が信条だった。恐るべき清順!
桜庭れい子(白木葉子 あしたのジョー!)の一軒家が新興住宅地の坂の上にあるのが印象的だ。本作は「坂」の映画である。坂を自動車が物凄いスピードで狂走する。仙波加世(江波杏子)の当たり屋が怖しい。足が不自由になる設定もいかにも清順だ。加世のれい子へのストーカーはオカルト映画のようにエスカレートしていく。次作「ツィゴイネルワイゼン」の大谷直子に引き継がれていく。
本作の主題はもちろん「穴」だ。ゴルフボール、ホール、パラソル。穴にボールを入れるゴルフがあからさまに性交や売春につながる。
鮮やかな原色の色彩は清順だ。壁紙、ワンピース、が強烈に配色される。
弟・純(水野哲)の部屋は奇妙だ。中二階の箱部屋で黄色に塗られ、縄梯子で出入りする。「宙吊り」は清順が好む主題で、ラストにれい子に付きまとうファンの野呂圭介は網で宙吊りにいけ捕られる。
純の回想は桜が満開だ。清順印である。
清順は映像の映写を多用するが、本作はテレビである。れい子はワイドショーに出演していて加世が番組を乗っ取ろうとする。たびたびテレビ画面が重層的に描かれる。ラストは放火された家の中で、テレビが純の改造銃で撃ち抜かれる。
れい子の手の爪のマニュキアの色が変わっていくのが面白い。
シャワーでずぶ濡れになるのは「殺しの烙印」への目配せだ。
イーストマンカラー、シネスコ。
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