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悲愁物語のSALTのレビュー・感想・評価

悲愁物語(1977年製作の映画)
4.5
鈴木清順が狂っているのか、時代が狂っているのか。
1970年代と言えば。ヒッピームーブメントが日本でも流行し、知識階級の若者世代がコミューン思想やセックス革命にかぶれた時代。
また戦後の荒廃から脱却し、任侠映画は享楽的な無軌道の暴力を描く若者ギャング映画に支流が別れた時代でもある、、、ような。
主題歌に流れるレアグルーヴ感満載のブルースは、野良猫ロックのような若者ギャング映画を彷彿とさせる。
本映画のジャンルはネットで「スポーツスリラー」(どんなジャンルよ)とあったが、ジャンルとしてはバイオレンスなのだと思う。任侠映画が新たなダークヒーローとして若者ギャングやレデイーギャングを生み出して、新たな暴力の形を描いたように本作は主婦による主婦にしかできないバイオレンス、暴力抗争が描かれている。欺瞞と裏切りと報復によって任侠映画が進行するように、主婦による欺瞞と裏切りと報復によってひとりの女が破滅する。凄く怖い。トラウマ級である。そうした物語が鈴木清順というクレイジーによって、70年代という時代によって描かれる。これが同じ国で制作された映画であることにゾッとする。本映画と現代の日本映画を対比すると、本映画は日本映画よりもインド映画の方が近いのではないか。それくらいに、破天荒だ。
ゴルフものという梶原一騎原作のアクの強さも然る事乍ら、原田芳雄のインパクトも強い。全ての要素が調和せず喧嘩している。本映画は公開して2週間で打ち切られたという。さすが鈴木清順。鈴木清順には誰もついていけないんだな。この次の作品がツィゴイネルワイゼンになる。この作品の中にも天下の怪作の萌芽は既に芽生えている。
カットの繋ぎ方が異常。
2週間で打ち切られて、反省の色無く次作はもっと狂った作品を作るとか。やべぇなマジで。主題歌、劇中歌がとにかく格好良いので0.5点加点。
鈴木清順、原田芳雄が好きな人は絶対に観た方が良い。
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