坂

別離の坂のネタバレレビュー・内容・結末

別離(2011年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

アマプラでまもなく見れなくなるので視聴。
明るい物語ではないのですが、全編通して先を読ませない展開で、特に登場人物の心の機微や、ささやかなトラブルが発展していく様など、繊細な描写が非常に巧みな映画でした。

ハリウッドみたいにわかりやすいプロット、展開、演出、人物の成長を期待する人はあまりハマらない作品だと思います。
最初と最後で状況は変わらないどころか悪化しており、この映画にカタルシスは無いと思う。
邦画の人間ドラマが好きな人には合いそう。そういう系統は自分も結構好きなので、見ていて結構引き込まれました。

メインプロットは、夫婦の離婚の顛末。
サブプロットに、子供の流産を巡った謎の解明と、そこから描かれるイランの社会的な問題の提示がある。

離婚をすることになったある夫婦の顛末を描いた物語。
舞台はイラン。
ある夫婦が離婚調停をし、妻はしばらく家を出ることに。
夫は学校にいく娘の送迎と仕事がある。
仕方なく、父の介護のために介護ヘルパーを雇うことにした。
ヘルパーとのトラブルが起こり、ヘルパーは流産。裁判沙汰となる。
裁判は泥沼化、相手の旦那と揉め、二つの家庭は崩壊、日常が壊れる。
物語の後半では、登場人物の皆が嘘を着いていることが判明。
その嘘のせいで、事態がややこしくなっていた。
互いに主張があり、揉めに揉めて最終的には分解。

メインテーマは「嘘」かなと言う感じです。「愛」かもしれません。
この二つのテーマはかなりこの物語をこじれさせる要因になっています。
家族や立場を守るためにそれぞれが「嘘」をつき、それらが拡大した結果、二つの過程が崩壊するという顛末を迎えます。

主人公の娘のメガネ少女テルメーがとにかく頭の回転が早く、勘のいいガキ過ぎていつキメラにされるのかとハラハラしてました。結果から言うとそんなことはなかった。

イランの抱える宗教上の問題や、社会的な格差、男女差別などから生ずる日常の問題を描くのがとにかく上手かった。
イランは人によって宗教の進行度合いが大きく変わるみたいなので、それらが登場人物の思想や行動にかなり反映されていた。

テルメーが裁判所で嘘をつくことを選択した瞬間に、この物語はバッドエンドに向かうんだなとわかりました。
全部の結末を描かず、視聴者に投げかけている点で、この物語は見る側に何かを尋ねさせる映画なのだとわかった。
ただ、こうしたシナリオ構成は後味がとにかく悪いので、救いが無く、見てて心地よいものではないかな。

終盤が怒涛で、静かなんだけど、一気に引き込まれる展開を感じさせてくれた。
映像で流産した時の情景を見ていたのに、後半から明かされる真実はこの物語の見え方を大きく変えてくれた。
シナリオがとにかく凄い。
ただ、結局金は誰が盗んだんだろうって。
坂