シャチ状球体

ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

3.9
映画自体もそうだし、制作過程の混乱も有名な『地獄の黙示録』の舞台裏を映したドキュメンタリー。
派手なアクションシーンも多い前半と地味~~~~~~~×65535な後半の(悪い意味じゃなく)テンションの落差だけでも、本編を観ていてどうしてこんな構成になっているのか不思議に思うよね……。

『地獄の黙示録』は作品自体に内包された狂気に撮影側も影響されて……みたいなある種キャッチーな宣伝のされ方をされることもあるけど、単純に厭戦的な空気や植民地主義への直接的な批判を本編の後半で出せなかったために、カーツというキャラクター自身に全てを背負わせた結果煮え切らない脚本になったのだと思う。

意外だったのは、コッポラ自身もヘリのシーン以降や結末が弱いことを認識していた点。監督でも制御不可能な一大プロジェクト……スタッフの安全を考えると中止した方が良かったのかも。
よりによってフィリピンの内戦中に大統領に掛け合ってヘリを借りるとか、何だか計画段階の時点で既に予算や撮影に対する向き合い方が本気なのか自棄なのか……。

撮影が過酷すぎるのとキャラクター設定が定まっていないのもあって、マーティン・シーンもデニス・ホッパーも殆ど演技をしていないのはもはや虚構と現実の境目が消えてしまったかのよう。
マーロン・ブランドのスター級いちゃもんと実際に儀式で牛を殺す原住民のエキストラ(このシーンを本編で使っているのはモラルを疑う)。
完成できたのは奇跡だね……。スタッフや俳優の健康や安全が全然守られてない現場だったのが分かって、もう一回観ようとは思わなくなったけど……。
シャチ状球体

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