円柱野郎

ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

監督の妻エレノアが「地獄の黙示録」の撮影現場を記録したフィルムをもとに構成されたメイキング・ドキュメンタリー作品。

「地獄の黙示録」がいかに難産だったのかを物語る記録映画として、貴重で面白いドキュメンタリーになっている。
元々はオーソン・ウェルズの企画としての「闇の奥」があり、その後ジョージ・ルーカスとジョン・ミリアスが舞台をベトナム戦争に翻案して企画した作品が「地獄の黙示録」の始まり。
その企画を譲り受けたコッポラだが、当初の目論見(少々の焼き直しで出来るはずだ)から、進めるうちにどんどん離れて泥沼にはまっていく過程が生々しい。
主演の交代、撮影の遅延、台風の被害、御しがたい役者陣…。しまいにはコッポラまで神経が参っていく様子が収められ、実は撮影現場が「地獄の黙示録」だったという内容は、コッポラには悪いが…ヘタをすると事実である分だけ本編より面白いかもしれないw

撮影初期に監督が「アーウィン・アレン(「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」の製作)の作品のようにしたい」と語っているところを見ると、結果としては構想と違ったものが生まれたようにも思える。
そもそも撮りながら結末の変更を考えている時点で撮影時は話として出来上がってはいないわけだが、元々あったルーカスたちの企画通りのエンタメ路線では納得できなかったというのが、作家としてのコッポラの潔癖さをうかがわせるところだし、それが故に自分の首を絞めたというのが皮肉なところ。
そこは自業自得だとしても、終盤、明らかにラリッているデニス・ホッパーや、内容を理解していないマーロン・ブランドの相手までしないといけないコッポラの疲弊ぶりは想像に難くない。

軍用ヘリの撮影中に、本当のゲリラ掃討のためにいきなり撮影現場からヘリが離れていったり、マーティン・シーンが心臓発作で倒れたりと、本当に制御できない現場だったんだろうなあ。
撮影200日のパーティーなんて祝ってる場合じゃないはずなのに、もうヤケクソだったんだろうかw
マーティン・シーンが倒れたというニュースがハリウッドの記者に漏れるかもしれないという場面で、コッポラが「もうわしゃ終わりじゃー!」と言わんばかりに当たり散らすレコーダーの声が印象的。
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