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キャスト・アウェイのNMのネタバレレビュー・内容・結末

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

時間に追われるビジネスマンが突如無人島に一人流されて一向に帰れない話。すぐ帰れるのかと思った。
人間が極限状態においてどうなるかなども見どころだが、普通に遭難シーンが結構怖い。あと虫歯の怖さを知る。

95年、12月。
チャックは世界規模の運送会社フェデックスで生産管理を担当、各国を飛び回り超多忙。
スピードを売りにする会社だから、従業員たちに時間を1秒でも節約するよう大声で発破をかけている。
愛する婚約者がおり、二人はこの彼女の深い理解のお陰で成り立っていた。
この夜は親族が集まるクリスマスの食事会中だったが、呼び出しが入りセータ姿のまま急遽マレーシアへ飛ぶことに。
チャックは婚約指輪を彼女に渡し、大晦日には帰ると約束しセスナに乗った。

飛行中ひどい嵐に遭い、海に墜落。
雨が振り、夜の闇で何も見えない。
何とか救命ボートに乗れたチャックは、翌朝奇跡的に孤島の浜辺で目覚めた。大きな怪我はない様子。
ぼう然としながらも会社のポケベルや婚約者がクリスマスプレゼントにくれた懐中時計を確認するチャック。両方とも壊れている。他に荷物はない。
流れ着いていたのはフェデックスの宅配2箱のみ。大事なお届け物だからかこんな状況でも丁寧に拾い集める。だが手はつけない。
他のパイロットたちを呼ぶが誰もいない。

一晩経つと一つまた一つと箱が流れ着いてくる。
島にヤシの実が落ちていることを発見し、何とかかち割って中のジュースを飲むことができた。初めての水分。一応実も食べられる。

島は険しい岩場と未開の森。動物もいないようだ。海に入るとかなり岩場が固く裸足で歩けるようなところではなかった。足に布を巻き、島の高台に登ってみるとかなり険しい。
一人のパイロットが水死体となって漂着する。靴やポケットライトなどを拝借したあと、なんとか穴を掘り埋葬してやった。靴を見つめて思いに耽るチャック。

川すら見つからず、わずかな雨水を探して舐めた。
船はめったに通らず、見えても遠すぎる。不時着した時のボートで漕ぎ出してみるもこの辺りは波が険しすぎ、さらにボートは壊れ足は岩場でズタズタに怪我をした。

数日晴れていたがまた激しい嵐が来る。
洞窟を見つけ横たわる。足を治療する術もないし水分も食料も探しに行けない。
あまりの疲れに気絶するように眠りに就く。その間つけっぱなしだったポケットライトは電池が切れてしまった。
嵐が去ると雨水が見つかったので多少の水分が摂れた。

ついに集めた宅配物を開封していくチャック。やはり愛社精神で開封せずにいたようだ。
一つずつ開けてみると使えそうなものもいくつか見つかった。ただ一つ、天使の羽が描かれた箱だけは何となく開けずにいた。
小魚や蟹などを捕まえることができた。いい加減火が欲しい。
一晩粘って小枝をこすってみたが着火せず、ついに苛々が爆発した。
ボールに顔の絵を描き、話しかけながら正気を保つチャック。
2日かけてついに火が着いた。焼いた蟹は美味だった。

次のトラブルは虫歯。
多忙にかまけて治療に行けずにいた。今では何もしなくてもズキズキと痛いしこれでは物も食べられない。
力づくで抜いた。

そして4年が経つ。カラダは筋骨隆々になっている。しかし状況事態はそのまま。採れる魚は少し大物になったようだ。
あのとき宅配物で作り上げた周囲の物は朽ちており、チャックの表情もうつろ。
今がいつなのか岩場に日付をメモしている。いつどういう風で波なのか理解しているらしい。
あの時顔を描いたボールは名前もつけ本当の友人のように大切にしている。

そこに不時着したセスナの破片が流れ着いた。
拾って見つめていると、イカダを作ることを思いついた。
島の各地で材料を集め何とか製作、岩場に名を刻み海へ漕ぎ出した。ボール君も一緒。
何度も大きな波に飲まれながら進むと、少し穏やかな場所へ出た。
雨が降ればヤシの実で作った水筒に水を貯めた。潜水して銛で魚も捕る。

嵐を超えるうちイカダはどんどん崩れていく。
ついにボール君も流されてしまい、初めて泣き崩れるチャック。もう持ち物は首に固く結んであった婚約者の懐中時計だけ。

目を閉じ運命に委ね流されていると、近くを貨物船が通り、ついに救出された。

チャックはかなり捜索されたものの死亡扱いとされ、葬儀も済んでいた。そして婚約者は既に知り合いと結婚し子どももいた。
会社は大々的にチャックを歓迎しセレモニーを開いた。招待はしたが婚約者は混乱し会わずに帰っていった。この4年ずっと会いたかった人をチャックは密かに窓越しに見ていた。
他の人は意外と普通に接してくれる。生還を喜び、親切にしてくれた。

久しぶりに大勢の人と会ったチャック。
一人になると、テーブルに並ぶカニやライターを見て黙考する。
あの懐中時計はベッドサイドに起き、また見つめながら考えた。
思い切って婚約者宅を訪ねる。

すると彼女はだいぶ落ち着いた様子で、二人で包容を交わすことができた。
家には家族写真がたくさん飾られ平和な生活がみてとれる。
ただ事件のことを細かく調べ、最後まで生還を信じていた様子だった。
彼女の人生は色々と進んでいたが、チャックはこれからどうなるのか検討もつかない状態。
すれ違いを認識し、帰っていくチャック。

彼女は見送ろうとしたが、ふいに駆け出しチャックを追いかけた。今度は激しく抱き合い口づけを交わす二人。
しかし彼女を家に送り届けた。
お互い愛しているからこそ一緒にはなれない。

あの時を振り返るチャック。
死のうとしたこともあったがそれすら上手くいかなかった。失敗したことで生きなくてはと感じた。
これからも生きていくのみだと決意を新たにした。

最後まで開けなかった天使の羽の描かれた荷物を届けに行くと不在だった。
帰りに十字路で停まっていると、一人の女性が車を停め十字路の各行き先について案内してくれた。
去っていく彼女の車に描かれた絵を見つめ、チャックは穏やかに微笑みを浮かべるのだった。


最初と最後ではチャックの人となりがかなり変わっているのが印象的。当たり前ではある。最初は典型的ブラック企業のクズ上司にも見えた(時代的に別に普通だったかもしれないが)。経験を通して変わったのだろうか。
そしてウィルソン社のバレーボール、ウィルソン君の存在が印象的だった。こんな状況下では彼のような人物でもボールにあれほどすがるのも納得できた。クリスマスの時期なので贈り物が多く箱の中身がユニークだったのがストーリーをより面白くしている。序盤でアーミーナイフのキーホルダーを渡されるのかと思いきやそうでなかったところも小憎い。あれでは少しの間しかもたなかっただろう。スケート靴なら4年もったとしてもそういうものかと思える。
長年のストレスで流石におかしくなったかと思ったが帰ってみるとむしろ達観した様子で、今度豊かな人生を送るようにもみえる。
それにしても改めて遭難はしたくない。

あんな状況でどうしてここまで頑張れたのか、などの書き込みをもっと見たかったところ。
深みのある人間ドラマを求めるよりは、それなりに迫力やスリルはあるのでそれを楽しんだ方が良さそう。
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