apapatti

キャスト・アウェイのapapattiのネタバレレビュー・内容・結末

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ヤシの実でのどを潤し、カニをすすり、木をこすって火をつけて、筏で無人島を脱出する、、、というめちゃくちゃプリミティブなサバイバルの映像がそこにあった。これ以前の無人島サバイバル像ってどんなんだったんだろう、というくらい人類の原風景にしみこんでいる絵だったと思う。

全体的な画がすごくきれいで、南国ながらのキレイな海と孤独の対比がなんとも美しかった。魚なんてそう簡単に取れないし、火なんてそう簡単にはおきないし。でもヤシの実はあるんだよね。
足ケガしたところより、圧倒的に虫歯にリアリティがあるのもいいところだなと思う。治る見込みがないもの、と考えると本当に絶望的。抜いたとて抗生剤とかないのに大丈夫なの!?とかそんな後先考えてる余裕もないんだろう感もそうだよなあ。

人はみな時間が雇用主だ、それで飯を食ってる、という生真面目な人間像の冒頭から一転して、イマジナリーフレンドにがっつり感情をぶつけて時には癇癪を起す孤独の4年、さらに社会復帰してからの感情の低さの変遷がすごくて、ずっとまるで別人であって。

助かってからしばらく、いきなり全然なにもはなさなくなって、ずっと何を考えているかわからない男だったのが、すごく不気味だった。
ちょいちょいライターとかナイフとかのモチーフを手にする瞬間があったりして、それが己を無きものとして扱う社会に対してどう感情として扱われているのが見えないように描かれていて、ずっとどこかで破裂するのではないか、とハラハラしながら見ていた。

結果としてはめちゃくちゃ人間として、大人として、社会性として、最も成熟した、しているであろう、相手への尊重のあふれるふるまいに終始していた、というのがこの映画の救い。助かってよかった、ではなく、それでも生きて呼吸をするのだ、風が帆を運んでくるかもしれない、という人生観のパラダイムシフトにまで落とし込んであるのが、みていて気持ちの良い作品であった。

考えてみれば飛行機でも、君が大変な時にそばにいてやれて悪かった、って言ってたもんね。どう考えたって一番大変だったの自分でしょ、という。
また釣りに行こうな、なんて軽い声かけも笑顔でいなし、君をよみがえらせてやる!なんてどう受け止めていいやらわからん声かけも笑顔。カニ殻はポイってしてたけど。

飯がうまい!とか現代社会に戻ってきた喜び!みたいなシーンは一個もなかったんだよな。無人島に戻りたいなんてシーンもなかったけど。

選べるのは死のタイミングだけだった、それすらうまくいかなかった、だから生きなきゃ。生きて息をしなきゃと思ったんだ、というあの折り合いの付け方が、すごく純粋に人間としての強さというか、あり方というか、己の得てきた過去を背負って、腐らないいきざまというか。 

ラスト、どのみちにも行ける、という自由を広くとってほほえむ終わり方もさわやかであった。めっちゃかわいかったね。

監督のロバートゼメキスってめっちゃ聞き覚えあるなと思ったら、バックトゥザフューチャーでフォレストガンプの監督であった。そりゃそうだよな。おもろいわな…!

呪術廻戦で虎杖のモノマネのネタ元も見れたしやったぜ。


解説記事を読んで追記

あっ、、、冒頭の荷物がベティーナ宛だったのか。。。!
そして「アトリエのゲートに旦那の名前がなくなってて、ベティーナは独身とわかる」わかるか~~~マジかすげ~~。
apapatti

apapatti