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ナチョ・リブレ 覆面の神様のLCのレビュー・感想・評価

3.9
面白かった。

「 Nacho Libre 」という題名は、 Lucha Libre (ルチャ・リブレ、メキシコにおけるプロレスの呼び方)から来ていることがわかる。本作はプロレス映画だ。
しかし、驚くほど見やすい作品である。汗臭さよりも笑いにステータスを振っているので。
ちなみに、Nacho とは Ignacio (イグナシオ)という名前の人に対する愛称である。主人公の名前だ。

本作では貧乏修道院で料理係として過ごしている主人公が、新人ルチャドール(ルチャ・リブレの選手のこと)として奮闘する。
元々ルチャドールに憧れていたのだが、憧れだけでイキナリ成り上がれる世界では、残念ながら、ない。
軽い身のこなしの素質満点な人とタッグを組むのだけれど、主人公もちゃんと素質を伺わせる描写が幾つもあるだけに、なかなか2人に結果がついてこない様は見ていて悔しくなったりする。

レスラーとして成り上がる為に欠かせない要素って複数あると言われているのだけれど、本作ではそのうちのひとつ、「精神面」をわかりやすく描いている。
最初に信心深さを描写することでその素質を見せるのだけれど、これが「神より科学を信じる」タッグパートナーや、プロレスに否定的なシスターとの会話を重ねて、何のために、何を信じて闘うのか、主人公自身も己に問いかけていくんだね。
最後の大舞台を前に、対戦相手も「ナンバーワンだ、最強だ」と気持ちを集中させている。
打ちのめされて、打ちのめされて、それでも最後に立ち上がれるのは、心が折れてない方だ。言い換えれば、相手の闘志を萎えさせることは勝利への手堅い切符になる。
とはいえ、イーグルパワーを頼りにしたりするのはやっぱり面白い。彼らがその話をしているのは、「 GIMNASIO (ヒムナシオ)」と書かれた建物の側である。そのものズバリ、ジムだ。
2人で行う様々な特訓の内容は、確かにはちゃめちゃで笑えるのだけど、それでも「バカみたいじゃねえか、やってらんねえ!」と投げ出さないところで気持ちの強さがしっかり見受けられたりもする。
ちなみに Nacho とタッグを組む人は、「 Esqueleto (エスケレト)」というリングネームだが、これは英語にすると Skeleton (スケルトン)、ヤセっていうかもう、骨だったりする。ガリガリくん。

強いルチャドールになれば、人気者になって異性からもモテるぞ!そんな人になりたい!と、つまりは「自分の為に」闘う主人公が、「この勝利は自分の為だけにあるのではない」と、その考え方を変化させていく。
しっかりプロレスというものの魅力のひとつを描いている。
それでも、笑えて気軽に見続けられるバランスを失わずに物語が続く。
何も気構えずに楽しい時間を過ごせる良い作品だと思う。
空の青さが綺麗でトブぜ。

主人公と仲良しの男の子が良い子過ぎてかわいい。 Chancho (チャンチョ)くん。ブタくんという名で呼ばれているわけだが、蔑称で使われていないことは、2人の関係性を見ていれば疑いようがないだろう。ちょっと不思議な感じがするかもしれないけれど、少なくともスペイン語圏ではそんなに珍しくない愛情表現だったりする。ただやっぱり、誤解を避ける為だろうか、字幕では先述の「ヤセ」のように訳されていない。そのまま「チャンチョ」だ。感覚の違いが明確に出る一例だと思う。興味深いよね。
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