湯っ子

愛情萬歳の湯っ子のレビュー・感想・評価

愛情萬歳(1994年製作の映画)
4.0
劇伴はなく、セリフも最小限。人物設定になんの説明もない。だけど、しだいに私もあのマンションの一角に息をひそめて、彼や彼女のすることをのぞき見しているような気持ちになる。
カメラはひたすら人物たちを眺めているだけなのに、それぞれの孤独を浮き彫りにしてみせる。その様子はおかしいやら哀しいやら。なにやってんのと笑ってしまいながらも、ああわかるよ、私もひとりでいるとこんなふうにバカバカしくて無防備だよって思う。
「青春神話」で思い浮かんだ「若い時代と悲しみ」は、むしろこちらの方が強く感じた。というか、「若い時代と悲しみ」で埋め尽くされているような映画だった。孤独にもがくのも、嗚咽するのも、若さゆえなのかもしれない。
もう若くはない私にはここまでのエネルギーはない、だけど、この感覚はたしかに知っていて、こうしてチクチクと胸を刺す。
湯っ子

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