愛の喜びを知ることもなく、食べて仕事して眠ってセックスするだけの日々を過ごす3人の男女の荒涼とした有り様をじっくり描いておきながら、タイトルは『愛情萬歳』なのである。
つまり、非常に意地悪な感じの強い寒々とした映画であって、そういったところに辟易しないでもなかったが、それを補って余りあるのがおそらく映画史に残ること決定済の自慰のシーンである。
自分の目と鼻の先に、愛しい人がいる。その人の声が、息遣いが聞こえるほど近くにいる。しかし、姿を見ることも、愛を伝えることもできない。ただじっと息を殺して自慰をすることでしか、伝えられない愛をやり過ごすことはできない。こんなにも辛く悲しい自慰のシーンが他にあるのだろうか。
ラストのいつ終わるのか不安になってくる長回し二連発の凄味も印象的。