ちぬちぃぬ

おかしな奴のちぬちぃぬのレビュー・感想・評価

おかしな奴(1963年製作の映画)
4.4
三遊亭歌笑(渥美清)という落語家の物語でありつつ、素晴らしい"反戦映画"
大正生まれの主人公の、戦中・戦後の時代背景

主人公の歌笑(金平)のキャラ設定がとにかく不細工で、変な顔、笑える顔…「珍顔」というわけでタイトル『おかしな奴』となっているのですが
そうでしょうか?
大きなお世話、可笑しな顔だと思ってちょうだいって言われそうだけど
別にそんなに渥美さんの顔は変じゃないですよ
まぁコレが結構、徹底して鍵になってるので甘んじて受け入れます(´ω`)

最初は話芸でなく見た目で笑われる所がコンプレックスであり
逆に自分から顔いじりしたらどうか
みたいな感じでこの時代のイケメン【長谷川一夫】や【上原謙】と比較して笑わせたり。。。

渥美清氏の演技はとても良くて申し分ないのですが、一つだけどうしても気になるのが“視力"です
視力が低いせいで徴兵も免れるほどなのに
時々目が悪い設定を忘れているような所があって
彼の視力は恐らく0.03〜2.0の幅があるんじゃないかと…紙に書かれた文字を読む時は紙に顔がくっ付きそうな見方だけど、遠くの人物、暗がりの人物、ちゃんと誰か見えてるやん!ってツッコまずには居られない


歌笑は勉強熱心で芸はどんどん上達✨
新作を次々作り、ネタは過激になり
同盟国のヒトラーを冒涜したとかで憲兵に逮捕されたりするのが
ここら辺はチャップリンぽくてオマージュなのかなと思いました

社会もどんどん戦争の色が濃くなっていって、そこら中の張り紙も初めは【一億一心】【一億火の玉】などだったのが
【一億玉砕】に変わり、戦況が悪化した事が分かる(玉砕してもうたらアカンやん)

しゃもじ兄さんが亡くなった時は泣きました(ノД`)
あの時、周囲の輩が「死ぬなんて迷惑な奴だ」とか「どうせなら祖国のために死ねよ」とか「非国民!」とか罵声浴びせるの悲しすぎる。。。

そして大日本帝国は敗戦し
戦後民主主義の日本になるわけで
作中にも【アプレゲール】って言葉が使われていて、
戦後の歌笑の芸風はまさに【アプレゲール】だったのね
時事ネタを使い、体制に反発的な内容で人気を得たりして
落語家界の【太陽族】みたいな感じ?

しかもこの当時まだTV時代じゃないから、"顔"が知れ渡らないラジオが主流…ホントにもう“顔が変だからウケる"ではなく実力で売れっ子になったわけです

終戦後から5年程度までのお話ですが、この頃の事が少し知れて面白かったです
この時代のお笑いは、演芸場とラジオくらいで まさに落語はうってつけだったんでしょうね

私個人的な経験ですと、祖母がよく落語を聴かせてくれたんですよね
私がチビの頃、寝る前とか絵本の読み聞かせ同様に落語が元ネタのお話してくれたんで、大きくなってから落語をテレビとかで聴いた時に(主に古典落語)
あっこの話知ってる!コレ落語やったんか〜ってたまになりました

この時代の落語の存在、この映画で改めて実感しました✨

あと最後にマジどうでもいいことですが気になって
カキワリの遠近感おかしくないですか?
コッチの方が歌笑の顔よりおかしく感じましたヽ('ω')ノ