千年女優

一命の千年女優のレビュー・感想・評価

一命(2011年製作の映画)
3.0
戦乱の終焉によって取り潰しが相次いで食い詰めた浪人たちが屋敷を訪ねて切腹を申し出ては金品を賜る「狂言切腹」が巷で起こる江戸時代初頭。名門の井伊家を訪ねた浪人で、応対した当家の家老である斎藤勘解由から半年前に同様に切腹を申し出た青年の話を聞かされる津雲半四郎。その無残な末路が彼を動かす様を描いた時代劇映画です。

邦画界では珍しくバイオレンスを得意として国際的にも名高い三池崇史が滝口康彦の『異聞浪人記』を映画化した事実上の小林正樹監督作品『切腹』のリメイクで、一年前の『十三人の刺客』成功に続けと市川海老蔵と役所広司、瑛太に満島ひかりといった豪華なキャストが彩る武士道を問う物語と演出が海外も含め一定の評価を獲得しました。

古典を丁寧になぞりますが、マスターピースとの比較は流石に分が悪く、輝度を抑えた画作りも重厚さよりもカルさを隠す印象を抱かせます。もとより中心は会話劇と三池監督が適任かは疑問で一見するとイメージ通りでも突き詰めると適役とは思えぬキャストもまたそうと、切腹のエグみがハイライトになっては薄味際立ってしまう一作です。
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