keith中村

スワン・プリンセス/白鳥の湖のkeith中村のレビュー・感想・評価

4.5
 皆さんのレビューをお読みしていると、子供の頃に大好きで繰り返し観たというレビューがたくさんありますね。
 日本では現在鑑賞困難な本作を観ることができたのは、それらの方々と同じ体験のある、私の映画仲間がどうしても再見したくってアメリカから取り寄せたという25周年記念盤Blu-rayを貸してくれたからです。
 
 調べてみると、本作の興収は製作費の半分も回収できなかったようですが、そんなことは関係なく、そうやって熱狂的なファンに繰り返し観られているというのは、本作にとって非常に幸せなことだと思います。
 公開年には「ライオン・キング」などというバケモノ級映画が対抗馬(獅子?)にいたので、分が悪かった。
 
 監督はディズニーから独立したリチャード・リッチ。
 たしかに、とてもディズニーっぽいキャラクタにディズニーっぽいストーリー。
 それは古典的ディズニーではなく、いわゆるディズニー・ルネッサンス以降のディズニーのテイスト。
 それがちゃんと「暖簾わけ(?)」した先にも反映しているのが面白い。
 
 本作は何しろナンバーがすべて素晴らしい。
 メインテーマの「Far Longer Than Forever」は言うまでもなく、序盤の「This is My Idea」から全部いい。
 とくに「This is My Idea」はミュージカル・シーンとしては珍しく、物語が停滞しない。
 いや、私は世間のミュージカル嫌いがよくいう、「ミュージカル映画は歌っている間、物語が停滞するのが駄目」という意見には全然反対で、ミュージカル映画とはそういうもの、それでいいと思っている。
 けれども、時々見ることができる、「停滞しないミュージック・シーン」はそれはそれで、見事だと感心するのです。
 最近では、「グレイテスト・ショーマン」がまったく同じく、歌っている間に幼少期からの成長を描いていましたね。
 
 「No Fear」の掛け合いも楽しいし、「No More Mr. Nice Guy」のシナトラ感もよい。一回終わったあと、リプリーズする定番展開に笑った。
 全曲歌える方がたくさんいらしゃるのも納得の、音楽クオリティの高さです。
 
 ミュージカル演出も、バスビー・バークレーをはじめとする往年のMGM、ワーナーの古典ミュージカルへの目配せがたくさんあって、ニコニコできる。
 
 あと、個人的に熱くなったのが、「リオ・ブラボー」以来幾度となく繰り返されてきた、「窮地のヒーローへの仲間からの武器トス」。
 本作ではそこに、さらに一捻りあって、かつ伏線回収にもなっているところは、めちゃくちゃアガりました!
 
 日本語字幕がなかったので、字幕をどうつけるか考えながら見てたんだけど、"Duck!" "Yes?"は翻訳困難だなあ。つまんない駄洒落なんだけど、繰り返されると笑っちゃう。
 あと、"Idea of fun"と"Idea of love"で、"Idea"の意味が違うところも気の利いた字幕にするの難しそう。
 
 貸していただいたひかヱるさん、サンクスでした!