シゲーニョ

ロビンとマリアンのシゲーニョのレビュー・感想・評価

ロビンとマリアン(1976年製作の映画)
3.9
本来ならば別の機会でレビューすべき作品であるが・・・
永遠のアイドル“ショーン・コネリー”が天に召されたため敢えて記す。

冒頭と終幕に映し出された朽ちた林檎。
老いたロビンとマリアンの「その後」の暗喩と思われがちだが、個人的には生き抜く中で信じていたものが、実は「虚像」だったと語っているように思えてならない。

ロビンにとっては十字軍で長年仕えた主君「王」。
マリアンにとってはロビンが去って、心の拠りところとなった主「神」。

捥ぎたての林檎が瑞々しく美味しく且つ美しいのと同様に、やり切れない現実社会を未だ知らずに、未来だけを見据えていた若きロビンとマリアンにとっては、「王」も「神」も迷うことなく信じるに値する「美しい」ものだったのだろう。

しかし、時が経つにつれ、それらは自然に、あるいは半ば強制的に、形も中身も変わってしまうのが世の常だ。

そして、どんなに年老いても、自らの信念と互いを想い合う心=愛情は変わってはならないと信じたマリアンは、大きな決断を下すことに・・・。

ボンドを引退して5年。当時46歳のコネリー。
「暗くなるまで待って」以来、9年ぶりの銀幕復帰となるヘップバーン。

二人共々、其れ相応の思いで出演した本作でありつつ、齢を重ねたからこそ、今を生きる「美しさ」「エナジー」を感じ得ることができる。


最後に・・・

監督リチャード・レスターの手練の見事さを忘れてはならない。
フィラデルフィア出身ながら、誰でも一度はその名を見聞きしたことがあるロビン・フッド=英国の英雄譚・・その後を、彼独特のペーソスと客観的な描写(「ナック(65年)」からの盟友デビット・ワトキンの望遠レンズを多様としたカメラワーク)で綴る演出力。

ヘップバーンとは撮影当時、馬が合わなかったようだが(撮影中、馬車が川で横転したハプニングが起こった際、動揺したヘップバーンを抱きかかえるコネリーのカットを即興で撮り、「昔より重くなった」という台詞を言わせたらしい・・・)、アメリカ人ながらビートルズの2作品を撮った英国ゆかりの監督らしく、英国出身の俳優たちによる英国らしい作品に仕上げている。

ただし、ロケは英国ではなくスペインらしいが・・・笑。