みんと

父子草のみんとのレビュー・感想・評価

父子草(1967年製作の映画)
4.0
寅さんはひとつもまともに観てないけど、ふらっと観たコチラは寅さんの原点と言われる作品(らしい)。

木下恵介が渥美清の為に脚本を書き下ろした同名TVドラマの映画化。
全国の工事現場を転々と渡り歩く初老間近の男とおでん屋台でふと知り合った貧しい予備校生との心の触れ合いを描く。

笑わせ泣かせの人情ものはやっぱり日本人の心に沁みるなあ…
イメージだけが膨らんでた“寅さん”像はやっぱり大きくは違わなかった。

今作では寅さん(敢えて)の演技もさることながら、おでん屋の女将役 淡路恵子が良かった。寅さんとの掛け合い漫才みたいな遣り取りが男前だし笑えるし負けてない。
そしてもじゃもじゃ頭じゃない石立鉄男が若い!めちゃくちゃ若くて誰だか分からなかった。そして初々しさがこぼれ落ちるかの星由里子が可愛い。清純さが画面いっぱいに広がる感じ。

おでんだけじゃ栄養が偏るんじゃない?!と正直突っ込みながらも、鍋いっぱいのおでんを嬉しそうに届ける寅さんが可愛い。

不器用で喧嘩っ早くて、そのくせ情にもろい。決して男前じゃなくても男前な男性って現代ではめっきり減ってる気がする。そもそも寅さん的魅力に気付ける人が減ってると言うか。更にはこの手の魅力を発揮出来る土壌が無くなったと言うか…笑


踏切の警報機の音のくだりなんて風情もあるし粋。貧しかったり不便だったり、また理不尽だったりは違った形で世の中に存在するけど、この時代特有のゆったりとした時間の流れとか、人生を良くも悪くも味わえてる余裕を感じる。何処か肝が据わってる感じも。


現代人がすっかり忘れてしまった大切なものがぎゅっと詰まった作品だった。

いい加減一作くらいは寅さんに向き合うおかなぁ…と思う反面コレで満足してしまったのは良かったのか悪かったのか。
みんと

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