よつゆ

仇討のよつゆのレビュー・感想・評価

仇討(1964年製作の映画)
4.7
初の今井正監督作品。

色々と言いたいことはあるが、先ず主演の萬屋錦之介(中村錦之助)について。
めっっちゃ『修羅』の中村嘉葎雄に似ている…!
一瞬で分かった、というか中村嘉葎雄なんだと思った。
それで調べたが、萬屋錦之介と中村嘉葎雄は兄弟だったのか。納得。
二人共素晴らしい役者さんだ。

そして物語。
やはり名作と言われるだけあって面白い。
『切腹』が武家社会の様式美への固執や虚飾に対するアンチテーゼなのだとすれば、本作は武家社会に強く根を張る封建社会へのアンチテーゼ。
どちらも結果として黙殺され、抗おうとするも社会に微々たる変化も与えることができず、社会権力の強さに屈する。
それが結果として現代における現実社会にも結びついている。

現実主義にも思える。
しかし、それらを映画で伝える事によって、何よりも理想主義を感じさせてくれる。
観客の殆ど、或いは全員はこの映画を観たからと言って社会への反逆に目覚めることはないだろう。
所詮現実社会に屈して生き続けるまさに奴隷。
それでも映画を見ることで心に潜む理想主義を触発する。
映画の中でくらい大きな夢を観たい。
そして社会に牙を剥くキャラクターを応援したい。或いは社会、権力に殺されてゆくキャラクターに感情移入する。
だから面白い。

こういう映画を観たいんだ。
よつゆ

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