明石です

戦艦ポチョムキンの明石ですのレビュー・感想・評価

戦艦ポチョムキン(1925年製作の映画)
4.5
「肉にウジ虫が沸いてる!もはや肉だった何かだ!」「これはウジ虫などではない、ただの寄生虫だ。塩水で洗い流せば食べれる」

てなわけで水平の反乱が起き、町に波及、帝国軍相手に「革命」を起こすお話。ロシア革命の熱が冷めやらぬ1920年代に作られた政治的イデオロギーがギンギンにいきり立つ作品。また当時27歳のエイゼンシュテインが手がけた実験的な面のある一作で、モンタージュやクローズアップなど現在では当たり前に取り入れられている表現技法をはじめて定着させたことでも有名。

しかしウジ虫入りのスープを飲むのを拒んだからなどという理由で処刑を宣告されるの、きわめてスターリン主義的な時代の趨勢を先取りしてるのが凄い皮肉。しかし考えてもみれば、日露戦争にロシアが敗れたのも、一次大戦でドイツが敗北したのも、水平の反乱が発端だったので、ストーリーそのものはかなり史実に忠実。もっとも、「独裁を打ち破れ!」と作中で叫んだ民衆が、このたった数年後に、もっと厄介な独裁の犠牲になるというのは、歴史の大いなる皮肉ですね。

いやはや、100年前のサイレント映画だからといって舐めてはいけない。帝国軍が虐殺しにやってくる第4章の手に汗握る感覚は凄まじいですね。ブライアン·デパルマの『アンタッチャブル』でも引用されたあの有名なオデッサの階段シーンも堪能できて大満足です。
明石です

明石です