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小林多喜二のblacknessfallのレビュー・感想・評価

小林多喜二(1974年製作の映画)
3.0
小林多喜二の生涯を画くと言うことは共産党史としても興味深いものにもなるし、日本の権力の横暴、暴走、闇にスポットを当てることにもなる。

そーゆー意味でこれは当時がどんな情勢で共産主義がどう見られ、小林多喜二が共産主義にどんな理想を託して生きてきたがよく分かる作りなってる。

これだけ色々真摯に伝える映画って映像で振り返る~史みたいな平板なものになりがちだけど、これはその退屈を回避するために様々な手法を用いてる。娯楽映画として成立させようとする姿勢と熱意に好感が持てる。

でも、しかし、それがうまく着地できてるかというと、残念なことに凝りすぎたせいで、チグハグで見にくい映画になってしまったと思う笑

語り部的なおじさんが哀愁のフラメンコ調のギターを奏でながら多喜二の心情、道程を歌い上げたり、舞台がこの映画撮影時の現代に飛んでみたり、そこまでトリッキーにする必要あるかと思ってしまうぐらい突飛。劇中に展開する多喜二や共産党員の苦悩とミスマッチが激しすぎる笑

おもしろいとは思うけど映画の格を上げたり、テーマの強調に寄与してるとは思えなかった。
手法が悪いてよりセンスなんだろうな、同じような手法の"ドープ!!"や"ブラック・クランズマン"はちゃんと機能してたから。

しかし、画かれる警察の恫喝的な取調べや残虐な拷問、当時の一般の人達が共産党員に向ける目線。これらを見て思った。根本の性質はまったく変わってないんだと。我が国の権力は異議を唱える者達にどこまでも非道になれ、そして国民はそれを他人事として冷淡にやり過ごす。
それがあることで辛うじて存在できる弱い立場の人間が暴走する権力を内在化させ、人権を叫ぶ人を嘲笑う。そんな連中が溢れてたのは今だけじゃない、昔からなんだと。国民性?
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