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ティファニーで朝食をのhasseのレビュー・感想・評価

ティファニーで朝食を(1961年製作の映画)
3.8
清純派で売ってきたオードリー・ヘプバーンが、奔放なコールガールを熱演した名作。

ホリーは貧乏暮らし、年配旦那との雁字搦め生活に嫌気が差してニューヨークで自由に生きることを選択した20代女子。金持ちとの結婚を夢見るが寄ってくるのは下心しかない「ネズミ」ばかり。
隣人ポールは彼女の生きざまに最初は憧れるも、本気で愛するようになると、ホリーの生き方を本気の愛から逃げている、愛することとは互いのものになることだと説く。

以上のおはなしが展開される中でひっそりと存在感を放つのが、ホリーの飼い猫。可愛らしい添え物的な登場の仕方ではなく、部屋のシーンでは常に画面に映っている。
この猫は、ホリーの分身というか、ホリーが憧れる理想の自分を表しているような気がする。名前はなく(ホリーの信条では名をつけることは所有すること。つまり、飼われていながら所有物ではないフリーの存在)、男たち「ネズミ」を品定めし(あくまで自分が捕食者であり、立場が上だという無意識的な自己主張)、アパートの一室でエサを与えられ不自由ない生活を送る。
この猫は、ラストシーンのポールの説教にキレたホリーによって、どしゃ降りの町に放逐されるという鬼畜の所業を被るが、考え直したホリーは猫を見つけ出す。
本当の愛を見失っている上に、自分の分身=「理想」までも投げ捨てかけたホリーは、すんでのところで自分を見つめなおし、「理想」を拾いあげ、ポールとハグをかわす。その真ん中には猫が窮屈そうに収まっている。ラストで猫をサンドイッチしての男女が抱き合うシーンは珍しいが、「理想」はポールとの慎ましやかな生活にこそある、とホリーが気付いたことを暗示するうえで必要な演出である。

影の主人公、名無し猫を演じたのは一匹ではなくシーンによって20匹以上の子が演じ分けていたらしい。猫好きにとってはたまらんほどの登場頻度と重要度。本作は猫映画といっても過言ではない。

久々にみたオードリー・ヘプバーンは男を振り回すコケティッシュな魅力を発散していてめちゃくちゃ可愛かった。
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