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ブルーバレンタインのtulpenのレビュー・感想・評価

ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)
5.0
描かれるのはわずか2日間の出来事。 結婚7年目、その年月と同じ年のかわいい娘が1人。結婚していれば当然訪れる夫婦の倦怠期。 正看護婦として働く妻シンディ(ミシェル・ウィリアムズ)と朝からビールを飲みながらペンキ塗りの仕事をしている夫ディーン(ライアン・ゴズリング)シンディは、いまの生活に安穏としている夫に嫌気がさしている。ある事情から夫には負い目を感じているのでそのことを言えないでいるが彼女の心から溢れたその気持ちは生活の中に滲み出てきてしまっていた。

夫は娘に対して、それこそ無条件に優しい。多分、息子だったらきっと事情が違っていたと思うけど娘は妻の分身のように思えるのだろう・・・。ディーンにとって彼女が全て、愛が全て、そんな男だから妻が冷たくなっていったこと、それが彼の不満なのだ。 その冷えた夫婦関係と交互するように彼らが出会ってから結婚に至るまでの出来事がフラッシュバックされる。
交互する彼らを区別する符号が
ライアン・ゴズリングは額のハゲっぷりで、ミシェル・ウィリアムズは笑顔のなさで、表現している←半分ウソw

2人が生き生きとして、指が触れ合っただけでも愛おしくて仕方がないほどに夢中だった過去は
手持ちカメラで追いかけられていて、一方、どんよりとした今の生活はガッチリと撮られているのも切ない。

妻と楽しい一夜を過ごそうと思いつくディーン。だいたい、宇宙のなんたらなんて、部屋に名前がついた安モーテルなんかに行くからこういうことになるんだ(笑)結婚する前、彼がどれだけハートフルで人を喜ばせるアイディアに満ちた人だったかを表すシーンがある。その時のままの彼であれば絶対にそんなモーテルは選ばなかったはず。

妻を想っている心はそのままでも彼女が愛した彼のそんな美点は生活に埋もれてしまって彼自身ですら忘れちゃってる。それが彼女にとっては何より寂しいことなのに・・・。 彼の方は妻が刺々しくなっている意味がわからない。そして逆切れし、取り返しのつかないことになる。

あぁ・・・なんだかどちらの気持ちもわかってやるせなくなる・・・。

恋愛と結婚は別物だ。
それを思い知るためにするのが結婚じゃないかなぁ。だからこそ結婚までの思い出は甘美であればあるほどいいのかもw

エンドロールの散りゆく花火
街中でのタップシーンと歌声
2人の儚くて美しくて愛おしい姿
振り返らない背中

指の間から大切なものが滑り落ちていくような切ない思いが ずっと残るなんだか忘れ難い映画です。


静岡シネギャラリーにて。
2011.5/11 (29)通算1248
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