いろどり

天上草原のいろどりのレビュー・感想・評価

天上草原(2002年製作の映画)
4.7
これはモンゴルの映画の代表的な作品といっても良いのではないかと思うほどモンゴル文化を美しく残した映画だった。モンゴル族の監督夫婦による貴重な作品。エキゾチックな民族衣装、内装もきらびやかなゲル、壮大な自然に酔いしれた。民族衣装で馬に乗り、颯爽と草原を駆けるモンゴル族の人たちはまるでチンギスカンの時代を見ているようだった。

遊牧民モンゴル族の暮らしを町の漢民族の少年の視点で描いているので、観客も少年と同じように観察しながら驚きの感覚を味わえる。少年がナレーションですべて説明してしまうのはもったいなかった。暮らしや心の機微を丁寧に描いているので説明はそこまでなくても良かったと思う。

牧歌的なだけではなく、ヤギを殺した狼の首に輪をかけて引き回す報復やヤギの屠殺、依存し合う遊牧民の暮らしといったリアルな伝統と、弟の人民解放軍への入隊といった現代のモンゴル(内モンゴル)もしっかり描かれているのが良い。政治的なメッセージがないのでとても見やすかった。

音楽は「あの子を探して」「初恋の来た道」を手掛けた人。伝統歌唱ホーミーを多用した民族のアイデンティティを感じる叙情的な音楽に胸が熱くなった。

天に近い場所をモンゴル族はテングリタラと呼び、天上草原という意味があるとのこと。
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