シャチ状球体

アメリカの影のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

アメリカの影(1959年製作の映画)
4.2
アメリカに存在する何重にも入り組んだ差別構造を散文詩的な構成で描く映画。

バイナリ規範はもちろんのこと男性と女性の生活する領域が完全に区切られていて、今よりも遥かに規範と規範に順応する社会的な意識が強い時代で、異なる人種同士の結婚が禁止されていたこともあって自由恋愛が実質成立しない環境。

脚本のない即興演技で作られているということで、濃密なストーリー性よりも主人公のきょうだい達の日常を切り取ったようなシーンの繋ぎが特徴的。
重大なことが起こってもその次のシーンではまた日常に戻り、抑圧を生む構造は維持されたまま映画は終わる。

公開当時のアメリカ映画界の中では異色中の異色作品だったことが容易に想像でき、現代に生きる人たちもなお苦しめられている数々の規範を可視化してくれる名作。
シャチ状球体

シャチ状球体