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アメリカの影のatsushiのレビュー・感想・評価

アメリカの影(1959年製作の映画)
3.8
即興演出。カサヴェテス自身が「創造的アクシデント」と呼ぶそれが、既存の映画文体を揺るがせたのはもう70年も前のこと。”即興”というキーワードで安直にカサヴェテスが敬愛したジャズと結びつけて良いだろうか。今作もジャスは重要な登場人物ではあるが。いや、特にジャズに明るいわけでもないのでこれは置いておこう。

「インディペンデント映画の父」と呼ばれる彼は、ほぼほぼハリウッド独裁の50年代アメリカにおいて異端児であったことには変わりはないが、即興演出を、「俳優の内から出てくる何かに委ねている」という側面で見れば、同時代に映画に輸入された「メソッド演技」とも繋げられる気がする。また、海を渡ればイタリアのネオリアリズモや、少し先にはフランスのヌーヴェル・ヴァーグが控えている。現代視点で映画史を俯瞰して見ると、実は同時代的な作家でもある気がする。

面白いのは、近年海外で注目されている日本の作家達は皆何かしらでカサヴェテスと通じている点。是枝裕和は同じく即興演出を得意とする監督であるし、濱口竜介に至っては大学時代「ジョン・カサヴェテスの時間と空間」の題で卒論を書いている。まだまだジョン・カサヴェテスには興味を惹かれる。

2024/05/08 1回目
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